27.明星山クライミング
   とき:   平成14年10月3日〜10月5日
   山域:   明星山(新潟県)
   メンバー:三浦章、広重強(やまびこ) 

  明星山は日本海に姫川が注ぐ支流の小滝川の北にある1189mの山である。南に向かって6つ目のピークから岩壁が高度距離約500m、幅約300mで小滝川にほぼ垂直に落ちている。対岸の右岸には絶壁に沿って林道が走り、P6南壁を正面に見ることが出来る岩質は石灰岩で、濡れるとすべり、岩角が激しく侵食されていてロープを傷つけやすい。日本を代表する岩場である。取り付きは駐車場から10〜15分と近いが、小滝川の渡渉があり、水量によっては渡れないこともあるらしい。夏は山が低いので暑く、虫も多く快適ではなく、9〜11月がベストシーズンである。土日に登攀者が集中する。中央バンドや上部を抜けてからの落石が多く、上部に他のパーティーが居るときは落石がまず起きると覚悟したほうがよい。出来ることなら平日の他パーティーが居ないときを狙ったほうが安心である。  今回が4度目の明星山である。前回の3年前は、マニフェストの途中で雨になり、中央バンドで撤退した。今回は4日間チャンスがある。パートナーは「やまびこ」の広重である。102日山口南ICで乗るが、山陽道広島本郷ICで通行止めとなり、一部タイムロスとなる。翌日に糸魚川に出てヒスイ峡の駐車場に到着する。☆10/2  20:30山口南IC→(10/3)7:00糸魚川IC→7:40ヒスイ峡

○P6南壁「正面壁ルート」W級
  一晩中交替で車を運転して睡眠不足。今回の目標ルート「マニフェスト」を2日目に登ることとし、まずは中央バンドまでのルートで体を岩に慣らすために正面壁ルートを登ることとする。  台風21号が通過した直後で小滝川の水かさが増し、渡渉はズボンを脱いで行なった。水は冷たい。取り付きは以前登った直上ルートと同地点なので判りやすかった。1ピッチ目は人工、カンテとスラブをトラバースで40m。人工とはいえ、ピンは少なく、きわどいフリーばかりで40m登る。2ピッチ、3ピッチとハングの下を右上気味に人工を入れてトラバースする。特に3ピッチ目はシビアであった。
  支点はハーケンが多く、リングボルトは少ない。また、ブッシュやフレンズ類を使用する。4ピッチ目は黒っぽいスラブを厳しいフリーと人工で登る。5ピッチ目からはV級程度の岩場だが、少しラインをはずすと容易に引き返せなく、ルートファインディングに神経を使う。ここからがこのルートの核心のようである。支点が無く、ブッシュを支点とするが、あまり信用できない。  この不安定な岩場を2ピッチすすむと傾斜はさらに緩くなり、7ピッチ目からは広重と交替でリード。歩いて移動できる大岩に達する。下降路は大変急で、木につかまったりしながら小滝川沿いの林道へ出る。
☆10/3  8:50登攀開始→14:30大岩→15:20駐車場

○「マニフェスト」X級  5.10d  430m
  南壁中央部をほぼまっすぐに突き抜ける豪快なフリーのルートである。全12ピッチあり、どのピッチも気が抜けない難ルート。終了点からもさらに不安定な岩場が続く。3年前は雨で中央バンドまでで撤退している。今回は4日間のチャンスがあるが、天候や平日で他のパーティーがいない、等の理由で今日登ることとした。登攀時間は7〜10時間必要。4:00起床。展望台の駐車場には豊橋ナンバーの車とテントがあり、自分達以外にもパーティーがいた。
  渡渉は昨日より水位が下がっており、ジャージをまくるだけですんだ。取り付きには新しくリングボルトが平行に2本打ってあったので分かりやすい。
  ラインは頭上300m上にある鷹巣ハングを目指す。6時に開始。フェースを左上気味にV〜Wの岩場で支点は1本も無い。絶対に落ちる事はできない。細いつげの木で支点をとるが、気休めにしかならない。2ピッチ目:左のかぶり気味のクラックから1本目のハーケンまで少し遠いが、左手でジャミングを決めて登り、スラブに右上する。3ピッチ目:小さなハングを乗り越す。5.10dであるがピンは近く、プレッシャーは感じなかった。次に草付きのスラブからバンドを左へトラバースする。本来はワイドクラックへ入るのだが、少し左へトラバースし過ぎた。  下部城塞は左側へ抜けるようにして登る。6ピッチ目:緩いスラブを左上し、中央バンドの末端に入る。次々上部城塞下を右へトラバースし、ハング下へ進む。なかなかルートファインディングが難しい。8ピッチ目は5.10dであるが、割合落ち着いて登れた。右のピナクルへの凹角から左へ折り返す。次の10ピッチ目はW級とは思えない程難しく、A0の人工で登る。11ピッチ目:最高グレードの5.10dのスラブであったが、あまり難しくは感じなかった。
  洞穴に入り、いよいよ鷹巣ハング下をアンダーでトラバース洞穴の出口に向かう。ルートの中で最も絵になるところだ。  広重はこれで最終ピッチが終わりほっとするが、それもつかの間、ここから下降路までが大変だった。一応7時間でルートをぬけたので上出来である。もう1パーティーは自分達より2時間遅れで同じルートに取り付いていた。愛知県の豊川山岳会パーティー2人で、彼らが登り始めた頃、自分達は5ピッチ目を登っていたようだ。自分達が最終ピッチにいる頃、彼らはもう10ピッチに入る所まで来ており、力量のあるパーティーと思われる。
  ところで、最終ピッチからさらに我々は5ピッチも登ってしまい、下降路がうまく見つからない。踏み跡が落石の流れなのかはっきりとしない。少し下りては断崖絶壁を登りかえす、を延々と繰り返す。かなり上部まで上がり過ぎた事には間違いない。過去何度となく下っているのに、今回は様子が違う。まあ、落ち着いて下りよう、ビバーグになっても構わない、活路を何としてでも見つけよう、と心に言い聞かす。
  できるだけ断崖から離れ、西側のブッシュ帯へ下り、同じ所を意を決して懸垂下降に入る。50m懸垂を2度し、さらにもう1度20m下降すると大きなルンゼ状になり、下りられなくなった。しかし、通常の下降路のトラバースラインが近いような気がして、広重に「また登りかえすぞ!」と声をかける。ヘロヘロになりながらもついてくるしかない。ルンゼを登り、小さな尾根が見えてきた。これだ!と思って50m程登ると赤テープと踏み跡に出た。やれやれ・・・。その地点から林道までは15分であった。広重は極度の緊張の登攀の後の下降の難しさに参ってしまった様子。林道脇の湧き水を思い切り飲んで、下降出来た喜びの固い握手を交わす。
  駐車場に戻り、糸魚川のスーパーで買い出していると、前線の通過でどしゃ降りの雨となった。再度駐車場に戻り、豊川山岳会のメンバーと情報交換をする。彼らは最終終了点から左へトラバースして下降路へ抜けたという。あまり時間的には変わらなかったようだ。テントで夕食。目標ルートが登れて大いに盛り上がる。
  「マニフェスト」の12ピッチ全てリード。下降にも難儀させられたため、次の日は少し余裕のあるルートを登る事にする。夜中大雨となり、雷鳴が鳴り響く。
☆10/4
  4:00起床→6:00登攀開始→13:05終了点→14:30南壁の肩→16:30下降終了

○「左岩稜」W級−
  朝起きてみると地面はずぶぬれだが、空は快晴になっている。壁は垂直なため、乾きが早い。少し時間をおけば登れる。昨日エネルギーを使ったので、今日は少し余裕のあるルートにする。南壁の方まで抜けるルートだと10時間は考えないといけない。豊川パーティーも同じ事を考えていた。もう1パーティーは千葉から来ていて、8時になって起きてきた。我々は明星山の中で一番取り付きやすい人気ルートの左岩稜を登る事とした。1ピッチ目はブッシュもあり、まだ乾いていない。なんと中間部でラインをどのように進めばよいかと岩を探っていたら、右手でつかんだ岩がごっそりとはがれてしまい、一緒に3、4m落ちた。怪我はなかったが、すぐに気を取り直し登り始める。広重は明星山に来てフォローばかりなので自信をつける意味でもこのルートは「つるべ」で登ろうと考えていた。  彼の緊張がロープから伝わってくる。「落ち着いて登ればできる!」と励まし、登ってもらう。確かに良いルートである。以前にも自分は登っているのでよく把握できており、楽しみながら登れた。昨日のルートとは大きなギャップがあるが、満足感は十分にあった。
  明星の大岩壁に取り付いたのは今日は3パーティー。自分達が駐車場に降りた頃、豊川パーティーは大岩あたり、千葉パーティーは遅く登り始めたにも関わらず、「キャプチュード」という難ルートの上部に達していた。
  計画では日曜日も登る事にしていたが、もうこれで今回は十分納得がいく。あとはゆっくりと帰る事とした。
☆10/5
  6:00起床→9:10登攀開始→12:40大岩→14:00駐車場→      20:00小松
☆10/6
  6:00小松市→8:00南条IC→14:30山口南IC

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