感想
宇部山岳会にとってこの冬最初の大山である。ルートが一の沢から無名沢に変更されたのは現地に着いてからである。新雪が深く、悪天候の恐れがあったからである。また、藤井君の雪山経験の少ないことも考慮した。予定の一の沢では、取り付きまで道路をかなり長くラッセルしなければならず、また、コース中のルートファインディングがややむずかしい。三浦さんは急遽、無名沢に変更した。
無名沢と周回道路と交わる所には駐車スペースがある。無名沢では車を下りた第1歩目から山頂までほぼ同じ斜度を登ることになる。ここから900メートルを一気に登高するのだ。
樹林帯はどっぷりと雪に埋もれ、静かである。腰までの雪、いつまでも続く急斜面。自分の息遣いと鼓動をBGMにラッセルする。三浦も村上も何とも言えない幸福感に酔いしれた。これを「ラッセルハイ」と名付けよう。一方、経験の乏しい藤井君はラッセルの要領を得ず、四苦八苦している。何度か先頭を務めたが、もがくだけで歩が進まない。ついに三浦と村上だけの交代ラッセルとなる。
奮闘する藤井 | ラッセルハイ?の村上 |
---|
右に無名沢が深くえぐれてくるとまもなく樹林限界に出た。いつもなら樹林限界からはアイゼンの効くクラスト斜面に変わるのだが、今回はそうはいかない。樹林帯ほどではないが、膝までのラッセルが続く。風雪が強まり、視界がさらに悪くなる。目鼻がバリバリに凍る。ホワイトアウト気味なので、埋もれた灌木の凸凹を目印に進む。意識的にコースを左へ左へと取るよう、三浦さんから指示を受ける。これはできるだけ早く木道に出会いたいからである。右にそれると頂上台地でリワンデリングする恐れがある。
藤井君の足がもつれだしたので三浦さんが後からフォローを始めた。下からワカンを支持してやらないとうまく登れない。太股がつりだしたようだ。本人の言わせると、「疲れたというよりは命の危険を感じた」らしい。確かに、初めての冬山が大山のバリエーションで、風雪の急斜面を延々と登高するのだから、そう感じるのも無理はない。しかし、一言も「きつい」などの泣き言をいわずに黙々と奮闘する彼は山屋である。
赤旗が見えた。夏道の木道は旗の下なのだろう。頂上小屋は屋根が少し出ている程度に埋まっている。頂上を踏んで小屋へ逃げ込む。藤井君、よくがんばった。夏道を下り出したとき、「頂上縦走をしないのか」と問う藤井君に三浦さんが「死にたいのか」と返事する。本人はほっとしたようだ。
厳しい雪山を長時間ラッセルできた喜びに浸って3人は宇部に帰った。ラッセルは山の基本だ。 (村上)
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||