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伯耆大山三鈷峰西壁αルンゼ
 
 
日 時  2021年2月7日(日)
天 気  ガス
メンバー  宮田、内田
行 程  山口~米子~大山寺4:30~元谷5:20~中宝珠越6:00~剣谷6:40~三鈷峰αルンゼ取付6:55~三鈷峰山頂9:10~勝間ケルン9:40~剣谷~中宝珠越~元谷~大山寺11:25~山口
 三鈷峰西壁に以前から気になっていたルートがある。剣谷から山頂まできれいに繋がったルンゼだ。調べてみると、αルンゼというらしい(名称は鳥取大山観光ガイドHPに掲載の大山概念図による)。一昨年、昨年と積雪が少なかったため、見送っていたが、いよいよ今年行ってみることにした。
 過去、宮田と別山中央稜に登った時、前日、飲み過ぎて、太陽の光で目を覚ましてしまったが、今回は3時半起床と同じ過ちは犯さない。
 ここ数日、気温の高い日が続いており、今日も気温が上がりそうなため、暗いうちから行動を開始した。
 気が急いて大山寺を4時半に出発。元谷には5時半前に着く。そこからペースを落とし、中宝珠越を経て剣谷に降りたが、さすがに暗いままでは取り付けない。時間的に少し早すぎた感はあるが、登攀準備をしながら、明るくなるのを待った。
 周囲にガスがまとわりつき、強風が通り抜ける剣谷は落石が散乱して、気持ちの良い場所ではない。
剣谷
 ガスであまり視界はきかないが、見当をつけて目の前に見える広いルンゼに取り付いた。少し登ると幅は狭まり、両岸壁が立ってくる。ルンゼの中は落石があるため、岩壁の状態から少しでもリスクが低そうに思われる右寄りを進んだ。
αルンゼ取付
 下部では、ここ数日の好天のせいか、クラックが見られたが、今日の雪の状態から判断するに雪崩の心配はなさそうだ。締まった雪の斜面をダブルアックスでガシガシ登る。
ルンゼに走るクラック
 ガスが薄れた折に見上げると、その先でルンゼが狭まり、雪が途切れている。ちょっとした涸滝となっているようだ。近づいてみると、傾斜は緩いが、外傾した岩に氷が発達している。ここでロープを出して登攀開始。岩混じりだが、久々のアイスクライミングを味わうことができた。
外傾した岩が氷に覆われる
 雪が切れているのはわずかな距離で、涸滝を越えると再び雪のルンゼを進む。40mほどロープを伸ばして、ピッチを切った。ルンゼの中には支点をとれるような灌木はほとんどないが、岩に適当なクラックがあるので、カムがあると便利だと思う。今回はさらにスノーバーも使用した。
1ピッチ目の終了点から下を見る
 2ピッチ目はガスのせいで先の様子がはっきり分からない。一瞬のガスの切れ間で判断するに、右にもルートは取れそうだが、上へと続くルンゼも進めそう。ここは上へ続くルンゼを最後まで詰めることにする。2ピッチ目も出だしが氷結しており、ちょっとしたアイスとなった。
 そのまま岩混じりのルンゼを詰めると、45mほどで山頂直下の登山道に出た。ルンゼ最上部は浮石だらけで、足を置くだけで、こぶし大の岩が動き出す。下に落ちないよう慌てて掴んでそっと移動させた。
ガスの切れ間に現れた2ピッチ目
 無事に登攀は終了。山頂に移動し、宮田とがっちり握手を交わす。剣谷で吹き荒れていた強風は落ち着いている。それでもガスは濃く、ゆっくり過ごす雰囲気でもないため、下山を開始した。
ガスの山頂にて
 あとは登山道で下山するだけと軽く考えていたら、ユートピア手前の分岐を剣谷上部のトラバースに入った途端にトレースがなくなった。ガスはますます濃くなり、7~8m先も見通せない。それでも、あまり高度を落とさないようトラバースを続けると、ガスの中に勝間ケルンが浮かび上がった。ホワイトアウトの中での安心感。これほど勝間ケルンの存在を有難いと感じたことはない。
ガスに浮かび上がる勝間ケルン
 ここまで道を間違えてないことに安心したためか、最後に大失態をおかす。視界がきかない中、誤って宝珠尾根手前の支尾根に乗り、なんと剣谷に降りてしまったのだ。3~4人の登山者を見かけたせいもあり、何の疑問も抱かなかったが、そのうち距離と周囲の様子がおかしいことに気づく。
 遅ればせながらGPSで確認してみると、元谷に降りているつもりが、剣谷に入ってしまい、今日登ったばかりのαルンゼの取付も通り過ぎていた。まさに狐につままれた気分で、宮田と二人で顔を見合わせる。そうしてみると、見覚えのある光景のような…。
 仕方がないので、気持ちを切り替えて、今朝歩いてきた中宝珠越を目指す。自分たちのつけたトレースを辿り、少し登り返した後、一気に元谷へ下った。
トラック図(三鈷峰αルンゼ)
 三鈷峰αルンゼは、快適なルンゼとちょっとしたアイス、最後は岩混じりの登攀となり、変化のある面白いルートだと思う。ただし、今回は気持ち良く登ることができたが、難易度は雪の状態次第で変化するので注意したい。
 また、下山時、ホワイトアウトの中、剣谷へ降りてしまったことは良い経験となった。同じ過ちを繰り返さないよう心掛けたい。
(文・写真:内田)
       
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