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白川又川奥剣又谷(奈良県上北山村) |
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日 時 |
2021年7月22日(木)~23日(金) |
天 気 |
晴れ |
メンバー |
池本、内田、鹿野(会員外) |
行 程 |
前日夜(21日):山口~御所南IC~国道309号~天川村~行者還トンネル駐車場西口
一日目(22日)晴れ:行者還トンネル駐車場西口5:30~大峯奥駈道6:10~1418ピーク~1219ピーク~大栂山手前から南西尾根を下降7:30~フジノトコ8:40~白川又川~中ノ又谷出合9:40~火吹谷出合10:50~水晶谷出合14:10~口剣又谷出合15:05~テン場15:30
二日目(23日)晴れ:テン場6:00~1060二俣6:25~1200二俣7:00~八経ヶ岳山頂11:30~弥山~大峯奥駈道~行者還トンネル西口駐車場14:15~国道309号~御所南IC~山口
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沢登りをたしなむ者にとって、いつかは行ってみたい紀伊半島の沢。大峰・台高をはじめとするあまりにも有名な沢登りのメッカだ。今回、梅雨明け直後となったタイミングの連休で、大峰の秀渓といわれる白川又川の奥剣又谷に行くことにした。 |
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仕事を終えた21日の19時30分に池本と待ち合わせ、途中で鹿野を拾ってから、一路、東を目指す。現地までの予定時間は7時間半。もう少し早く着くだろうと思っていたが、現地に着いたのは夜中の3時。やはり道中長かった…。30分ほど軽く飲んでから就寝。 |
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当日は頑張って5時起きの5時半出発。
いよいよ長い一日の始まりだ。行者環トンネルの駐車場から大峯奥駈道に出て、その後、稜線上の歩きやすい登山道を南東に進み、大栂山手前で南西の尾根を下る。尾根の途中850m付近が分かりにくい。下部でも切り立った崖で行き詰ったので、最後はアンノ谷から降りた。ようやくフジノトコに着いたのは8時40分。この時点で既に疲労感いっぱいだ。
フジノトコで準備をしてから遡行開始。
白川又川はかなり水温が低いと聞いていたので、今回3人ともウエット装備で臨む。それでも水に浸かると、あっという間に身体が冷えるので、できるだけ水に浸からないよう進むが、泳がなければ進めない箇所もある。
しばらくして現れる中ノ又谷の出合は左岸の岩を越える。次の上部幅広いナメ6mは左壁に乗り込もうとするが、悪いスタンスに耐え切れず、水流の中にドボン。消耗して身体を冷やした挙句、右岸から巻いた。その後も泳がされる滝が続き、体温を奪われながら遡行を続けると、火吹谷との出合となる。 |
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中ノ又谷との出合手前を必死に泳ぐ |
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火吹谷との出合を過ぎると、突然、赤い岩壁から流れ落ちる水流が滝となっているのが目の前に広がった。
よく見ると、支沢が流れ込んでいるのではない。左岸一帯、至る所で、湧水が壁から流れ出しているのだ。思わず動きを止めて、見入ってしまった。 |
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赤い岩壁から湧き出る滝 |
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今回、ラバーソールで遡行したが、白川又川の岩との相性は今までに経験したことのない微妙なものだった。
中国山地の沢では、滑るか滑らないかは見た目で分かりやすいが、白川又川ではその判断が難しかった。フリクションを信じて足を置いたところ、滑って転ぶことが何度もあり、その度にダメージが受けるのと、安心して足を置けないことのストレスとで、さらに疲労感が高まったような気がする。普段の日帰りの沢登りと比べて、荷物が重いため足の置き方が雑になっていたことも要因だと思う。
赤い岩壁のゴルジュを抜けると、広い円形劇場のような空間に12m斜滝がかかる。少しでも泳ぎを避けるため、右岸をへつって、滝つぼの手前を左岸に向けてダイブした。
左岸の取付き地点から登攀開始。支点が取りづらく、中間のテラスに上がり込むところが少しいやらしいが、ホールドスタンスはある。上部は足元をかなりの水量が流れるので、なかなか迫力だ。 |
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右岸から左岸へのダイブ |
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その後もしっかり釜を有した滝が続くので、水に浸かりながら遡行を続けると、長淵40mが現れた。
淵の奥には3m滝がチョックストーンから水を吐き出している。身体は冷え切っているが、ここまで来たら水線突破するしかない。滝奥に行かなければ取り付けないかと思ったら、淵を泳いで滝に近づくと、滝手前の左側にクラックがあり、ばっちりカムが決まる。クラックを辿ってチョックストーンの下に入ってしまえば、後は見た目ほど難しくなかった。 |
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長淵を抜ける |
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長淵を越えると、チョックストーン滝が2つ続く。3m滝は泳いで、5m滝はへつって越えた。へつっていると残置スリングがあった。
その後、間もなくで水晶谷の出合となったので、ここで小休止。この時点で14時10分。早朝からの長時間行動で身体が鉛のように重く、全身バキバキだ。特に足の疲労感が大きく、遡行スピードもだいぶ落ちてきている。それでも、テン場まであともう少しだと自分を励まして、先へ進む。
水晶谷出合からすぐの直瀑20mは左岸から高巻くが、疲れた足が上がらない。やっとのことで沢に復帰して、薄暗いゴルジュを抜けると、左岸から勢いよく水が飛び出しているのが目に入った。口剣又谷との出合だ。ひとまず目標としていた場所まで来ることができた。
ところが、周囲を見渡しても、テン場の適地が見当たらない。仕方がないので、切れかけた気持ちを奮い立たせ、もう少しだけ先へ進むことにした。出合の滝は上部の左岸のルンゼを詰めて巻き上がる。疲れた身体に浮いたガレの登りが厳しい。奥剣又谷に入ってしばらく進むと、ようやく適地が見つかった。
時間は15時半。急いで寝床を準備した後、簡単な食事をとってから焚き火で身体を温める。お酒を飲みながら、何とか上半身を乾かすことができた。あまりの疲れに、内田は19時半には寝落ち。前日の寝不足と長時間行動による疲労で、朝まで爆睡だった。 |
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ようやく訪れたくつろぎのひと時 |
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翌朝は5時起床の6時出発。昨日の疲れはほとんど取れていないが、十分な睡眠のおかげで、頭はすっきりした。今日は八経ヶ岳山頂まで高度900mを登らなければならない。
すぐに20mと9m滝が現れるが、登れないので、いずれも小さく巻いて落ち口に抜けた。八経ヶ岳の東面に位置する奥剣又谷には、朝から容赦なく日光が降り注ぎ、かなり暑い。早々にウエット装備を解除するが、身体が重い上に、さらにウエット装備がずしりと肩に食い込んだ。
大きな枝沢を右手に過ごし、快適なナメや小滝を越えて進むと、ロープを出すかどうか微妙なナメ滝が現れる。これがナメ滝3段15mなのだろう。ここは各自フリーで越えた。
すぐに次の滝が現れる。2~3段で構成されており、一番奥のチョックストーンまで考えると、かなり高さがありそうだ。3段15mの滝で間違いない。
一見、登るのは難しそうだが、遡行図によれば滝身が直登できるとのことなので、ロープを出して登攀開始。中間でハーケンを打った後、水流の中のクラックにカムが決まれば、思い切ったムーブで越えていける。後は苦労せずにチョックストーンの下でピッチを切った。疲れているはずだが、二人ともするすると登ってくる。 |
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3段15mの滝を越える |
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次の開放的な多段45mは、フリーで行けそうだが、念のためロープを出して登る。
その後も水量の減った沢を進むと、二俣となった。左は伏流気味で、水量は明らかに右の方が多い。ここは躊躇せずに右に入った。ところが、しばらく登ってみて、何だか沢の向きがおかしいことに気づく。GPSで確認すると、地図ではほとんど読み取れない1530m付近の支沢に入ってしまっていた。
懸垂で沢に復帰し、先ほどの二俣を左に進むと、倒木のかかった滝が現れる。倒木がなければかなり難しそうだ。このあたり遡行図との対応がよく分からなかった。ひょっとしたら奥の二俣に当たるのかもしれない。 |
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1530m二俣の左俣にかかる倒木の滝 |
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その後も、忠実に沢の本筋を詰めていく。両岸を岩壁で挟まれた中、次々と現れる重なり合った巨岩をボルダームーブで慎重に越えていく。結構な高さがあるので、絶対にミスは許されない。
暑さと疲労で遅々としてペースは上がらないが、少しずつ高度を稼ぐと、険悪だった沢の様子が変わってくる。水流が途絶える頃から、岩の規模が小さくなり、やがて不安定なガレ場となった。最後は羊歯の斜面に出ると、右前方が高くなっているのが見える。あれが八経ヶ岳の山頂なのだろう。もう一息だ。
重い足を引きずるようにして、そのまま立ち枯れた木が乱立する斜面を右手の高い方へ進むと、地図上に記載されている山頂直下の岩壁を見ることなく、ちょうど山頂の看板の裏に出た。無事に沢を抜けることができ、3人で固い握手を交わす。人気の山なのだろう。結構な人がいることに少し面食らったが、もう登らなくて良いことに安堵する。ここまで長かった。 |
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八経ヶ岳の山頂にて |
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休憩してから下山開始。あとは歩きやすい登山道を下るだけだ。靴擦れだろうか、足が痛くてたまらないが、確かめる余裕もない。疲れ切った身体を動かし、思ったよりも距離のある下りを汗だくになって車まで戻った。 |
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トラック図(白川又川奥剣又谷)2日目しばらくGPSを起動し忘れていたので、少し軌跡が飛んでいる |
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白川又川奥剣又谷の遡行は、これまでの沢登りの中で一番厳しいものとなった。
水量が多くなかったおかげで、滝を越えること自体はそこまで難しさを感じなかったが、長時間の行動と水温の低さで確実に体力を奪われたように思う。だからこそ無事に遡行し終えることができたことは素直に嬉しい。
思い返しても本当にきつかったが、メンバーに恵まれ、充実した遡行ができたことに感謝したい。 |
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(文:内田、写真:鹿野・池本・内田) |
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