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伯耆大山天狗沢
 
 
 
日 時  2022年3月12日(土)
天 気  曇り
メンバー  下程、内田、鹿野(会員外)
行程  山口~米子東~大山寺5:00~元谷5:40~天狗沢取付7:00~剣ヶ峰9:20~P1636~上宝珠越~元谷~大山寺11:30~米子東~山口
 3月に入って気温が上がり、山口市では18度近くになる日もあった。大山でも気温が上がり、雪の状態が気になるところだ。この週末も最低・最高気温とも高くなるようだが、今シーズン最後のチャンスだと思い、アイス装備で天狗沢に行くことにした。
 気温が上がる前に行動するため、4時起床で5時に南光河原の駐車場を出発。暗い中をヘッドランプの光を頼りに元谷へ向かう。この時点で既に生暖かい風が吹いており気持ち悪い。
 明るくなってきたが、ガスが立ち込め、ほとんど視界は利かない。今シーズンも多くの人が歩いたのだろう。元谷からもおびただしい足跡があるものの、気温が高いため雪が柔らかくなっており、しばしば足を取られながら進んだ。
 出発してから1時間半ほど経った頃、一瞬、ガスが薄れ、前方右に黒々とした大きな岩壁が姿を現した。大屏風だ。その左手には門のような天狗沢の入り口が見える。その上部にはアイスがあるはずだが、ガスに包まれ見ることはできない。トレースを外れ、もう少し近づいたところで、ハーネスとアイゼンを装備。気温は高いものの、ここまでの雪の状態から、雪崩のリスクは低いと判断し、門をくぐった。
天狗沢の入り口
 左手に元谷沢を過ぎて、天狗沢へ足を踏み入れた途端、大きな音を立てて屏風岩から大きな岩が落ちてきた。我々は屏風岩から距離をとった沢の右岸寄りを進んでいたので事なきを得たが、その後もカラカラと落石の音が続くのが不安をあおる。
 雪が柔らかいので、アイスの取り付きまで各自フリーで登ってからロープを出した。1ピッチ目は内田が登る。コンディションが良ければ、力量に応じたルートを選べるのだろうが、今回、屏風岩からの落石を回避するのは当然として、氷の下からは水の流れる音が聞こえていたので、スピード優先で右上するルートをとった。40mほど登ってピッチを切る。
天狗沢アイス1ピッチ目を登る
 2ピッチ目は鹿野。これまた40mほどロープを伸ばし、雪から岩が出ている手前でピッチを切った。相変わらずガスっており、先の様子がよく分からない。
2ピッチ目を登る鹿野
 結局、今回のアイスのパートは取り付きから70~80mほどだっただろうか。水の滴る氷を越えた後は、グズグズした雪壁の登攀となった。さらに気温が上がることのリスクを考え、ここからはコンテで進むことにする。その先で沢が分かれているので右へ。
アイスを越えて右へ
 視界が悪いので、雪がつながっていないように見えたが、かろうじて草付きを経て雪壁は続く。時折、沢の中ほどを湿った雪がサーと音を立てて流れ落ちるので、登攀ラインに注意して、ひたすらアックス・アイゼンを規則正しく交互に雪面に突き立てることを繰り返した。
雪壁を進む
 そろそろ稜線に出る頃かと思っていると、雪の上に小さな岩の破片が散らばっているのが目に入る。同時に、上部からパラパラと岩の破片が落ちてくるようになった。間もなくガスの中から上部左に脆い岩壁が現れ、そこから絶え間なく小さな落石があることが分かった。
 小さいとはいえ、スピードのついた落石が直撃すれば、深刻なケガをしかねない。上部に注意しながら、落石ラインに入らないよう進む。その後は沢から支尾根に乗り越し、いよいよ主稜線へ。重い雪に足を取られながら、剣ヶ峰に向かう。
支尾根に乗り越す
剣ヶ峰へ向かう
 剣ヶ峰に到着しても標識は雪の下なので、見当をつけて山頂で写真を撮る。南側には大きな雪庇ができており、クラックが走っている箇所もあった。
 気を抜かないように下山開始。いつのものか不明だが古いトレースはあるものの、とにかく雪が柔らかいので、雪庇が崩れたり、踏み抜いたりしないか緊張する。実際に何度も雪を踏み抜いたが、下には大きな空洞が開いている箇所もあった。天狗ヶ峰からP1636までの尾根も、トレースに足を置けばことごとく崩れるため、慎重にクライムダウンした。
ズブズブの雪をクライムダウン
 P1636まで下りれば一安心。後はユートピアに寄らずに、直接、上宝珠越に降りた。この頃になって、ようやく日差しが出てきて視界が晴れてくる。黄砂の影響だろうか、雪の上には汚れが目立つ。
 下山時にガスの晴れた天狗沢が良く見えた。そこから一気にペースを上げて下山したと言いたいところだが、ズブズブの雪に足を取られて、想定以上の時間をかけて大山寺に戻った。
下山時にガスの晴れた天狗沢を見る
 久しぶりの天狗沢。この界隈でアイスクライミングが楽しめる貴重な場所だ。今回、生憎のコンディションだったが、忘れかけていた氷の感触を味わうことができた。ただ、その後の気温の上昇を見ると、残念ながら今シーズンの大山もこれでおしまいになりそうだ。
 
( 文:内田、 写真:鹿野・内田・下程 )
    
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