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黒部 下の廊下
日 程 2009年10月31日〜11月1日 
メンバー 高田(単独)
 下の廊下は黒部ダムから十字峡までは二十数年前のGWに行ったことがあるが、その先の欅平までは行ったことがなく、吉村昭の「高熱隧道」を読んで何時かは行ってみたいと思っていた所である。
 しかし谷が深く雪渓がいつまでも残り日電水平歩道が完全に通れるのはその年の雪の状況によって変わり、秋のわずかな時期に限られる。
 阿曽原温泉小屋のホームページをチェックしながらどうしようか思案していたところ、宇部山岳会の9月の秋合宿で剱岳からの下山道で使用しているではないか!これは俺も行くしかないと決行することにした。
 交通機関を車、電車、バスで調べるが最終的に金はかかるが時間が一番早い電車で行くことにする。
  10月30日(金)
 最寄りのJR常磐線ひたち野うしく駅を18時15分の電車で出発。
 新宿駅発20時の特急あずさに乗り、松本で大糸線最終に乗り換え24時頃信濃大町駅着。
 駅には登山者がゴロゴロしているかと思いきや、シーズン外れのためか誰もおらず更に最終電車のため駅を閉め出されてしまった。
 しょうがないので駅の斜め前の広場にテントを張って寝る。
  10月31日(土)
 大町駅6時20分発の扇沢行きのバスに乗る。乗客は私の他に1名。扇沢も駐車場はガラガラで、乗客はチラホラ。混んでいるのは嫌だが、ここまで空いていると逆に不安である。
 扇沢7時30分発(この時期始発)の関電トロリーバスに乗り約15分で黒部ダム着。立山稜線方面は雪で白くなっている。
立山方面稜線に雪
黒部ダム放水
 天気は快晴。ジグザグの道を黒部川に向けて下って行く。
 8時45分内蔵助谷出合着。丸山東壁が良く見える。約十年前に登りに来て雨で途中までしか登れなかった事が思い出される。
丸山東壁
 ルートは標高1,100m付近の道幅約60pで、壁には等間隔に鉄杭が打ち込んであり針金が通しており良く整備されている水平歩道である。しかし黒部川側はすっぱりと切れており高度感は有る。落ちたら確実に助からないだろうなあ思うと、針金から手が離せない。
 10時30分頃黒部別山沢出合着。ネットで検索するとここの雪渓の通過で梯子を使っての高巻きの写真が出てくるが、この時期殆ど雪渓は残っておらず河原沿いに進むことができた。
 ここから先は白竜峡を下に眺めながらさらに狭くなった谷沿いの水平歩道を行く。ルートはしっかりしているが相変わらず幅が狭い。ここが下の廊下の中で一番迫力があり針金をしっかりつかみながら進む。
 12時頃十字峡着。ここは黒部川に剱岳側から剱沢と鹿島槍ヶ岳側から棒小屋沢が流れ込み、その名の通り十字となって富山湾側に流れていく迫力ある光景である。
 ここでしばらく写真を撮ったり、景色を眺めて過ごす。
 二十数年前にここに来た時は、当時所属していた会の先輩が剱沢大滝を登るというのでその偵察に付いて来たのだが、その時は大滝の近くまで行っただけで、滝の全容は見えなかったが滝の末端の舞上がる飛沫の迫力が凄かったのを良く覚えている。その先輩はその後に何度か挑戦した結果完登した。大したものである。
別山沢出合
白竜峡
十字峡
 十字峡を過ぎると道幅は若干広くなるが、相変わらず針金は手放せない。
 半月峡、S字峡を過ぎいい加減うんざりしてきた頃、右手前方に将棋の駒の様な黒四発電所の設備が見えて来る。これが見えると仙人ダムは近い。
 危険個所は抜けたと思うとホッとする。標高約100m下り吊り橋を渡りしばらく歩き仙人ダム着13時45分。
黒四発電所設備
仙人ダム内通路
 仙人ダムには工事作業者、車、建物が有り今までの光景からは想像が出来ない。
 ダムの建物の中の通路を通り、途中高熱隧道と交差するところを通る。
 硫黄の匂いと熱気が凄かった。160度の岩盤をダイナマイトの自然発火で沢山の犠牲者を出しながら作った高熱隧道だ。当然奥には入ることはできないが凄いと思いながら入り口だけを眺めた。
 その後再び登山道に戻り約100m登り返し、阿曽原小屋に向けて100m下る。
 小屋は10月一杯まで営業しておりビールの自動販売機も完備している。小屋で黒部峡谷鉄道の状況を聞くと、混んでないとの事。
 翌日は特別早出する必要は無いので一安心。テント代500円と温泉代500円を払ってテントを張り、テン場から約5分下った露天風呂に浸かる。(奇数時間が男性)風呂上がり後はテントでゆっくりラジオの日本シリーズを聴きながらビールと焼酎を飲んで過ごす。
阿曽原温泉小屋
阿曽原温泉キャンプ場
  11月1日(日)
 4時起床。5時30分出発。
 まだ薄暗いのでヘッデンを点けて出発。小屋から約200m登山道を登り、再び水平歩道を通るが前日に比べると道幅は広く歩きやすい。
 途中折尾谷は堰堤トンネル、志合谷は谷の下をトンネルがくり抜いており、ヘッデンを点けて進む。
 「高熱隧道」の本の中ではこの辺りに当時作業用宿舎5階建の建物が泡雪崩(ホウナダレ)によって対岸の奥鐘山まで吹き飛ばされて大量の犠牲者を出した所である。当然今はその後方もないが、どの辺がその現場なのかと想像しながら歩く。
 正面に奥鐘西壁が見える。
志合谷トンネル
奥鐘西壁
 その後しばらく歩くと下のほうに欅平の建物が見えてくる。電車の汽笛も聞こえてくる。
 最後は標高200m下り欅平着。
 9時40分。電車の時間を確認すると、10時1分発が空いているとのこと。
 すぐに缶ビールを買って乗り込む。宇奈月まで約1時間20分。
 最初は珍しく景色を見ていたが、途中で飽きてしまった。宇奈月温泉で350円の銭湯に入り、駅のそば屋でビールを飲みながらそばを食べる。
 宇奈月温泉→新魚津(富山地方鉄道)魚津→越後湯沢まで北陸本線特急はくたかに乗り、越後湯沢→上野までは上越新幹線Maxときを使い、上野から常磐線でひたち野うしくに18時31分着。
 今回ピークは一つも踏まない電車旅行であった。しかし前から気になっていたルートを歩くことが出来た。
 ちなみに今回の山行でかかった総経費(交通費、食費、温泉代)は約30,000円であった。電車は時間が早く楽だが金はかかる!
欅平駅
黒部峡谷鉄道
( 高田 記 )
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