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大山北壁・八合尾根登攀
山行日  2013年3月3日
山 域  伯耆大山(鳥取県)
天 候  晴れ
メンバー  村上、村岡、松並、中村(直)
登攀ルート  北壁・八合尾根
行 程  2日/
山口市内(15:30)~国道9号線~山陰自動車道~米子市内(20:30)~車内仮眠~

 3日/
起床・準備(2:00~2:40)~南光河原駐車場(3:10~3:25)~元谷小屋(4:25~5:10)
~八合尾根取付き(7:00)~八合尾根終了点(14:25)~夏山登山道~
六合目避難小屋(15:10~15:30)~南光河原駐車場(16:20~16:50)~
山陰自動車道~国道9号線~山口市内(21:40)
 

 「じゃあ、そろそろ行こうか」まだ夜も明けない午前5時、元谷小屋で準備を済ませ待機していたメンバーに、村上CLが出発の時を告げた。
 風は吹いていない。わずかな月明かりとヘッドランプの明かりを頼りに、八合尾根の取付きを目指し、元谷小屋を後にした。

 
八合尾根取付きに向かいトラーバスして行く
 1時間ほど登っただろうか。薄っすらと尾根や沢が姿を見せ始めてきたが、どうも様子がおかしい。
 中村がセットしていたコンパスを確認し、ここで大きく東寄りに軌道修正しながら登ることとなった。ほどなくして夜が明け、大山がその山容を現したその時、東の方向に八合尾根の取付きが目の前に現れた。
 どうやら二つ隣りの尾根を登っていたらしい。そのまま七合尾根をトラバースし、八合尾根に取り付く。
リード初挑戦の松並
 村上・中村ペア、村岡・松並ペアでザイルを組み、スタカットでアタックを開始した。
 尾根に登ると、そこはまさにナイフリッジ。雪面は程よくクラストしていて、ピッケルとアイゼンがよく効く。が、連続する痩せ尾根に緊張が途切れることはない。
 
 年末の八ヶ岳・阿弥陀岳南稜では、怖気づいてしまったという中村だが、果敢にリードに挑み、ベテラン二人のアドバイスを受けながら、終始、冷静に行動しているように見えた。
ガスが晴れ、八合尾根より別山を望む
 「間違って、別山に取り付いたかも知れない。今なら引き返すことができるが・・・」2ピッチほど登ったところで、村上CLからストップが掛かった。
 メンバーに、緊張が走る。上空では、捜索用と思われるヘリコプターが幾度となく旋回を繰り返し、物々しい雰囲気に、不安を掻き立てられる。「いや、八合で間違いない」との村岡SLの言葉を信じ、アタックは再開された。
中村をビレイする村上CL
 4~5ピッチあたりまで登った頃には、別山や弥山尾根にアタックしているパーティーの姿が見え、この八合尾根にも後続のパーティーが我々のすぐ後ろまで迫ってきていた。
 そして、核心部である極細のナイフリッジと、その先にある岩峰のトラバース。後続のパーティーには悪かったが、時間を掛けて慎重に突破した。
     
終了点へ向かう村岡SL
 核心部を越えてほどなくすると、尾根は広がりを見せ傾斜もなだらかになっていく。緊張から開放された瞬間だった。
 そして最終ピッチ。登攀らしいものはなく、終了点となる夏山登山道との合流までの緩やかな傾斜を残すだけとなった。
 ザイルを片付け始める村上CLと、ザイルを繋いだまま終了点へ向かう村岡SL。
 本来なら三鈷峰を目指すはずだった二人のベテランクライマーは、若手に技術を伝承するため、今シーズン最後の雪山をこの八合尾根で終えることとなった。
六合目避難小屋で、一息入れるメンバー
 
 ― 後記 ―
 
 帰りの車中、村上CLの口から「今回の山行を最後に、大山での冬季登攀は引退する」との言葉が発せられたが、にわかには信じ難い。そんなことは、若手会員は誰一人として望まないし、何より村上CL自身が、大山への想いを断ち切れるとも思えない。
 1年後、おそらく自分が引退宣言をしたことすら忘れて、若手をぐいぐい引っ張りながら、この気高い大山北壁に挑んでいることだろう。

 
( 文:松並/写真:松並、中村 )
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