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北海道の山 ⑤ 十勝岳
モノトーンの世界を行く
と き  2013年7月20日
天 候  晴れ
メンバー  斉藤(宗)  斉藤(滋)               
行 程  国設白金野営場(5:30)~望岳台登山口(6:00)~ 避難小屋(7;20-7:30)~
 昭和噴火口(8:40-8:50)~ 十勝岳山頂(9:55-10:30)~ 昭和噴火口
(11:10-11:25)~ 望岳台登山口(13:30)~ 旭川 ホテル泊
 内 容

 木立に囲まれた野営場の朝が静かに明ける。パン・スープ・トマト等の朝食を慌ただしく口に運ぶ。自宅でたまにパン食にするとめずらしく、食も進むが手っ取り早い行動食として食べ続けたので飽いてしまったのか、なかなか喉を通らない。しかし私は焦って無理して食べなくても大丈夫、非常用(?)の栄養分はしっかりと蓄えてある。
野営場の朝
 片付け・荷物の積み込みを終え、十勝岳の登山口である望岳台に向かう。車は整備された道を快適に進みどんどん高度を上げて行く。
 フロントガラス越しに見える山並み、青空に真っ白い噴煙を上げているのが十勝岳だろうか? 飯田高原から見上げる九重の硫黄岳を思い出す。

 登山口の駐車場には既に何台もの車が並んでいるが、登山者の姿はチラホラ。みなさんもう出立されているようだ。
 正面に十勝連峰の山々を眺めながら歩き始める。活発に噴煙を上げる十勝岳の左側に美瑛岳、右側にはFさんお薦めの富良野岳が見える。
 元気モリモリなメンバーなら縦走できるだろう。しかし利尻岳から始まって、今日で1週間(移動日の17日は途中サロベツ原野を散策)の行動で疲れが溜まってしまったのか、十勝岳ピストンさえ自信が無い。1時間で着く筈の避難小屋に中々辿り着かない。どうやらMも足が重そうだ。
     
活動中の十勝岳
 気温が上がり暑さが増してくる。前後に人影も無く、早や立ちしなかったことが悔やまれる。
 どうしても登りたかった利尻山・大雪山への意気込みに比べ、疲れという理由にかこつけダラダラしている自分が歯がゆいが、体は正直だ。
 満開のお花畑でカメラを手放せなかった大雪山と違い、時々イワブクロが目につくくらいで単調な登りが続く。ようやく避難小屋に到着し一息入れる。標準タイムオーバーだがまぁ何とかなるだろう。
イワブクロ
 避難小屋から左の尾根に取りつく。ザレ地の急坂が延々と続く。ここは正念場、気を引き締める。
 高度を上げるにつれ、表大雪の山々・麓の美瑛の長閑な風景が疲れを忘れさせてくれる。どうにかペースを取り戻せたようだ。それにしても傾斜はきつく足場は悪い。いつの間にか後続のパーティーが現れる。よし! 追いつかれないよう頑張るぞ。

 長い長いザレ場を登り切りようやく平地に辿り着く。
 左に大きな火口、行く手に真っ黒いピーク(山頂か?) 取りあえずここで大休止としよう。なんとか逃げ切った後続のパーティーは若い4人組。リーダー格の青年を始めみんな気さくで、勧められて2人並んで記念写真に納まる。
 4人のうちの一人はアメリカの青年で休暇を利用して日本を観光中とのこと。びっくりしたのは彼の行動食で、生の人参、丸ごと一本をガブリ!(もちろん皮つきで多分洗ってなさそう。)それを見て喜んだM<<この人ウマ年?俺もウマ年!>>は彼と並んでまたまた記念写真。私も「アー・ユー・ア・ホース?」と話しかけてみる。通じたのかな?笑顔が返ってくる。
勧められて仲良く(?)並ぶ。 遠景は表大雪の山々
 リーダー格の青年の話から、行く手に見える鋭鋒が山頂と知る。それにしてもなんと殺風景な景色だろう。足元から山頂まで無機質な黒の世界、花も無ければ緑も無い。空の青さと真っ白な雪渓、登山者の姿だけが目立つ。
 「まるで石炭の上を歩いちょるみたい。この山が百名山・・・?」とつい口にする。「確かに・・・。しかしこの雄大な景色、他にはなかなか無いよ。山のスケールがやはり違う。」とはMの弁。
 黒い礫地を進み山頂尾根へと続く急坂に取りつくが、さっきの急坂をしのぐ傾斜、登りはいいが下りはかなり厳しいだろう。やっと肩まで上がれたが、山頂まではもうひと頑張り。
黒い砂漠(?)広い礫地を行く
 お天気抜群、休日とあって山頂は大賑わい、順番待ちで山頂写真を撮る。
 大きな岩がゴロゴロする中で休憩に適した岩をゲットし腰を下ろす。目の前に広がる富良野岳や遠くの山なみにしばらく見惚れる。
 あぁ 十勝岳はやはり百名山だなぁと思いながら「あの山は何山?」と遠くのピークを指差していると、傍の人が「どの山?」と声をかけてくださる。Mが「何処かで見たお顔と思ったけど・・・、テレビで見たんかな?」と言う。たまたま隣同士になったおじさん・・・と気楽に話していたが、どうやら有名なガイドさんらしい。
 今日はNHKの《日本百名山・十勝岳》の収録で来ておられるようだ。大きなカメラ・マイクを持ってさっきから右往左往していた人達はNHKのスタッフさん。そうと分かればミーハー族の私、勇気を出して隣のおじさんにお名前を伺う。《山岳ガイド塩谷秀和さん》とっても優しく、不躾な態度にもかかわらず終始にこやかに応対してくださり、いっぺんにファンになる。
取材中のNHKスタッフ
 NHKが一般登山者を取材中。カメラの先はかの若者グループ4人だ。揃いもそろって美男美女。
 取材を終えて満足顔のスタッフに今度は私が取材を開始する。「NHKさんが野球中継とかで観客をアップされる時って、決まって美人ですね。今もそうですけど美人でないとダメなんですかねぇ・・・」スタッフのみなさん(笑い)「・・・・カメラマンの好みです。」「やっぱりね。」「何処の局もそうだと思いますけど・・・」どおりで取材されない訳だ。こうなったら取材されない分、取材しなくちゃ、「今日の十勝岳はいつ放送ですか?」「まだ決まってませんが、秋頃です。」
塩谷さんとNHKスタッフのみなさん
 《日本百名山・十勝岳》見逃さないよう気をつけよう。
 「お弁当は何ですか?」「パンです。」つまらない質問をしても、BSの《日本百名山》・山岳関係の番組のファンと感じたのか、丁寧な応対はさすがです。何気なく楽しんでいるこれらの番組の制作には、重い機材を山頂まで担ぎ上げている、画面には出ないスタッフの方達の、陰の力があるんだと改めて感じる。東京からの取材とのことだったが、ものすごい荷(機材)を担いでの悪場の往復、仕事とはいえ頭の下がる思いだ。(我が家は荷が無くても、前後しながら同じようなペースで下ったが。)
急坂を下る
 若者4人は美瑛岳経由の周回コースへ挑んだようだ。軟弱2人組は山頂尾根からの悪場を下り、黒い砂漠地帯をのんびり歩き昭和火口まで帰り着く。
 キューイフルーツを食べて元気回復いよいよ最後の難所ガレた急坂を下る。中学生か、高校生かの集団登山とすれ違う。「コンニチワ」と苦しい息づかいでの挨拶、いいよ、いいよ無理しなくてもと思いながら「コンニチワ」しか返せない。中にはスリップして転んでしまう子も、無理もない全員足元はズックだ。鍛錬登山かもしれないが、この悪場をズックとは無茶だと思いながらも、どうしようもなく、ただただ安全登山を祈るのみだ。

 モノトーンの世界でつまらない・・・と思わず愚痴ってしまった十勝岳。
 大雪山のすぐ近くで百名山、そんな単純な理由だけで登ったが、苦労した先には大展望と山好き同志のふれあいが待っていた。花も少なく荒々しさだけが目についた十勝岳、麓の美瑛の優しい風景が静かに見守っている。
文・斉藤(滋)  写真・斉藤(宗) 斉藤(滋)
 (次はFさんお薦めの花の富良野岳に登ろうと、美瑛で宿を探すも夏休みに入りどこも満員のため旭川のホテル泊まりとなる。富良野岳の予定は旭山動物園へと変更)
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