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裏銀座~雲ノ平・高天原~読売新道《後編》 |
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と き |
2013年9月10日~9月12日 前編
9月13日~9月15日 後編
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天 候 |
9/13 曇りのち晴れ、9/14 晴れのち曇り(夜は雨)、9/15 雨のち晴れ(夜は雨)
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メンバー |
加藤洋明、田村敦子、森本俊輔(会員外) |
行 程 |
【9月13日】
6:45三俣山荘 ~ 7:10黒部源流碑 ~ 9:17祖父岳分岐 ~
9:47-10:17祖父岳 ~ 11:25-12:00雲ノ平山荘 ~
13:55-14:05大東新道分岐 ~ 14:55高天原山荘~
15:40山荘発~16:00-47露天風呂~17:05山荘着
【9月14日】
3:00高天原山荘 ~ 6:47岩苔乗越 ~ 8:00-17水晶小屋~
9:15-25水晶岳南峰 ~ 9:35水晶岳北峰 ~ 10:55温泉沢ノ頭 ~
13:25-30赤牛岳 ~ 15:17-25読売新道4/8地点 ~ 18:10奥黒部ヒュッテ
【9月15日】
7:30奥黒部ヒュッテ ~ 9:50渡場=10:20乗船=10:30-45平ノ渡場~
14:50-15:05ロッジくろよん ~ 15:35-44黒部ダム~
20:10JR信濃大町駅前発 ⇒高速道路
【9月16日】6:10セミナーパーク着
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【9月13日(金)】
今朝もやはり雨。そして当然ガスっている。
昨日の疲れもあり、3人とも(私だけか?)確信犯的寝坊で明るくなってから起き出す。
空身で三俣蓮華をピストンする計画はカットして山荘横を黒部源流へと下っていく。徒渉が何度かあるため、夜間の降雨で増水を心配したが、最も大きい徒渉点、黒部源流も何ら問題なく通過。 |
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黒部源流の徒渉 |
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急坂を登りきると先ほどまでの草木が生い茂っている雰囲気とは別世界。
溶岩がごろごろ、平坦でだだっ広い祖父岳の裾野をぐるりと分岐点まで歩いているとだんだん空が明るくなる。
ガスも祖父岳の斜面をスルスルと昇っていき、視界が開けてくると遠くに赤い屋根の雲ノ平山荘がちょこんと見える。
「すごい!」「かわいい!」「きれい!」などなど、3人とも黙って歩く事ができない。
祖父岳へは空身でピストン。
頂上に立つと西から雲がどんどん流れていき、まず黒部五郎がお目見え。その後も鷲羽、水晶、薬師と360°ぐるりと山々が姿を現す。はるか彼方には高天原山荘も。
結局、ガスが晴れるのを待ち、祖父岳山頂に30分も滞在してしまった。
雲ノ平へはテント場へ続くルートが補修中で通行不可であるため、北側を迂回。ハイマツから飛び出すとそこかしこで池塘がキラキラ陽光をはね返していて本当にきれいだ。そんな夢のような景色の中に山荘に延びる木道を進む我々の靴音だけが軽やかに響く。 |
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雲ノ平から水晶岳 |
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絵本の中にいるような雲ノ平 |
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3年前に建て変わったという、かわいい雲ノ平山荘で大休止。
雲ノ平の広々とした台地、祖父岳のたおやかな山容、遠く望めるアルプス第一級の山々、
この絶景を心ゆくまで味わって、高天原へと出発する。 |
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山荘のすぐ横からコロナ観測所、奥スイス庭園を通過してどんどん高度を下げていくが、「森の道」と名付けられたルートが思いのほか悪く、先ほどまでの楽しい気分が吹っ飛ぶ。
水が沁み出しぬかるんだ箇所が多く、露出している岩もすべりそうで気を使う。森の中に不釣合いな鋼鉄製の長い梯子にもげんなりさせられ、ようやく高天原峠に着いた時は皆の顔に疲労の色がうっすら滲む。
その先もまだまだ下り、ようやく沢の音が聞こえてくると目的地はもうすぐ。明日歩く岩苔乗越へ向かう分岐を確認してやっと山荘に到着。 |
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高天原は幕営不可であるため、今夜は憧れの山小屋泊。
陽があるうちに濡れたテントや雨具を乾かしたり、ザックの中を整理しておく。その後、おまちかねの「秘湯 からまつの湯」へ。
女性用のお風呂は囲いがあるとは言え、見上げれば青空や木々の梢がある。大自然の中での入浴を湯船独占で満喫させてもらう。加藤さんと森本さんも河原の開放的過ぎる露天風呂で汗を流し、ご満悦の様子。 |
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高天原温泉と温泉沢の頭に続くルート |
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地形図上ではこの温泉がある沢に沿って温泉沢の頭へ突き上げるルートもあるが、山荘の主人が「ほとんど使われていない」と言っていた通り、上流はかなり崩壊が激しく危険。当初このルートを登って水晶岳へと向おうかと考えもしたが、止めておいて正解だった。
宿泊客は少なく静かな夜。単独行のかっこいい女性と共に山荘の外で山談義に花を咲かせながらの夕食がとても楽しい。
空が雲に覆われ、遠くから雷鳴が聞こえてきた。山荘の天気情報は下り坂と出ていたな、などと思いながらパッキングを完了させ布団にもぐり込む。明日は絶対晴れて欲しいと祈りながら。 |
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【9月14日(土)】
2時過ぎ、忍び足で山荘の外に出ると、信じられないくらい大きく明るく輝く星の数々に、しばし言葉を失う。小屋の天気情報をもう一度見るとお天気マークに変わっている。
素晴らしい展望が期待できそう。予定した3時きっかりにヘッドランプをつけて出発。 |
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水晶岳の裾を岩苔小沢に沿ってじわじわ高度を上げる。
沢の徒渉点まできても山頂はまだはるか上方だ。沢を徒渉し、豊富に水を湛えている岩苔乗越への登りで水を補給しておく。
ここは稜線直下まで水が湧き出しているが、水晶小屋以降のルート上には水場がなく、場所によって全く異なる水事情が興味深い。
2日前に通過した時はガスで何も見えなかった水晶小屋。今日は快晴でどこを向いても素晴らしい景色が目に入ってくる。
いつまでも見ていたい槍に背を向け、いよいよ本日のハイライトの縦走路に足を踏み入れる。緩やかな稜線から、やがて梯子が現れ岩場に変わる。
水晶というだけあって、砂がキラキラしている不思議な登山道は山名とは裏腹にハードな登りが続く。時に切れ落ちた断崖をトラバースしやっと南峰へ。殆どの登山客が南峰で引き返していくが、三角点は北峰にあるため足を延ばす。 |
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水晶岳南峰にて |
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水晶岳より赤牛岳方面 右奥には白馬岳なども見える |
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水晶岳から北進する縦走路はしばらく岩稜が続き、なかなかの厳しさ。全身をフルに使っての登りが睡眠不足の身体に堪え、私がまさかの大ブレーキ!
追うほどに逃げていくかのような赤牛岳。ビバークの文字が頭をチラつくがそれだけは避けたい一心でふたりから遅れて山頂へ。もう30分早ければ青空のもとで記念撮影できたのに、と思うと加藤さんと森本さんに申し訳なかった。
ガイドブックで『ガスの時は山頂から北西に延びる稜線に迷い込まないように』とあるが、ガスに巻かれていなくても間違えそうな明瞭すぎる稜線とは対照的に、読売新道の下り口は、そこに尾根が派生していると分かり辛い。
読売新道に入るといきなり崩壊し、ザレた斜面の下りやトラバースが連続するため、緊張する。ミスしたら東沢の谷へ一直線に転がり落ちそうだ。 |
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読売新道下り口の崩壊地をトラバース |
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平坦な砂礫でビバーク適地とされる6/8地点(赤牛岳(8/8)から奥黒部ヒュッテ(0/8)まで、要所にプレートが設置してある)を過ぎて樹林帯に入っても、さらに歩いて4/8地点に着いてもなかなか高度が下がらず、先が思いやられる。
2/8地点を過ぎて、あともう少しと思った矢先にまさかのアクシデント発生。
先頭を歩く加藤さんがハチに刺される。運悪く、手を置いた木の根元に巣があり威嚇してくる。ハチによるアナフィラキシーショックを経験していると聞き(エピペン○R持参あり)、目の前が暗くなる。20~30分経過、腫れは大きく広がっていないし、呼吸も大丈夫そうで少し不安が和らぐ。
日没はとっくに過ぎ、あたりが暗くなった18時10分、ビール片手に盛り上がっている釣り客たちに迎えられ、無事に奥黒部ヒュッテに到着。長い長い1日だった。 |
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【8月15日(日)】
10:20発の渡し船に間に合えば良いので、ゆっくり出発する。
テント場から平坦な河原を進むとすぐに東沢にかかる丸木橋。昨晩出会った釣り師のひとりが釣果を見せてくれる。美しく立派な岩魚。多くの釣り師が時間をかけてここまで歩いてくるのが分かるような気がする。
針ノ木側の渡し場まで、黒部川右岸に沿って高低差のある梯子や崖をトラバースするよう付けられた木製の歩道など、地形図からは想像できないようなハードな道のりだ。ハイキング気分で歩けると気楽に考えていたが、大きな誤算だった。 |
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黒部川右岸に設けられた登山道 |
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今日の最大の楽しみは渡し船。船を運行してくれる平ノ小屋の主人が客を乗せて渡している間に釣り糸を垂れておくのだそう。さて今日は釣れるのか?
黒部湖の西岸にも梯子や丸木橋を通過する箇所があるが、黒部川右岸の細い登山道に比べるとはるかに歩きやすい。ただし、中ノ谷、御山谷が流れ込む大きな入江を回り込んだり、じりじりとした登りが続くので意外と時間がかかる。黒部ダムからの遊覧船が来ては戻って行くのを恨めしい思いで何便見送っただろうか。
ロッジくろよんまでくると下界に戻ってきたなぁ、と実感。
観光客でごった返す黒部ダムから南方を見ると、彼方に歩いてきた山々の稜線が目に入り、感激もひとしお。 |
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黒部ダムにて いちばん奥の稜線が赤牛岳 |
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折よくトロリーバスにすぐ乗車でき、扇沢へと降り立つ。路線バスへの乗り継ぎもよく、JR信濃大町駅前に18時前に到着した。
下山後は加藤さんが現地の観光案内所に問い合わせてくれた、おすすめの幕営地でゆっくりもう1泊する予定だったが、台風18号の接近が心配で、温泉で汗を流し夕食を摂った後、夜を徹して車を走らせ、16日の朝6時過ぎに無事セミナーパークに到着した。 |
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読売新道の長大なルートを振り返ってみると、開削当時のロマンを感じるどころではなく辛かったが、仲間の存在に助けられ計画通り完踏できた。
鷲羽岳や雲ノ平など、人気の山域においても喧噪とは無縁の終始静かな環境で山を満喫させてもらえたことや、ここぞという時には雨に遭わない、天気が回復するなど、比較的天候にも恵まれていたこと、すべての幸運に感謝したい。
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文:田村、 写真:加藤、田村、森本 |
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