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大山別山中央稜、弥山から剣ヶ峰縦走
山行日  平成26年2月22日(土)
天 候  曇りのち晴れ
メンバー  内田、鹿野陽(会員外)
行 程  (22日):南光河原駐車場4:30~元谷5:30~登攀準備6:15~別山中央稜取付7:00
~別山頂上12:15~稜線13:15~縦走開始13:30~剣ヶ峰14:00~天狗ヶ峰
~P1636~元谷~南光河原駐車場15:50
 前回、弥山西稜を登っているとき、ガスが晴れた一瞬の間、別山がまるで何かのモニュメントのように聳え立っているのが目に焼き付いていた。
 まさか自分がその頂に立つことができるとは思いもしなかったが、今回、同行者と天候に恵まれ、忘れがたい経験をすることができた。
 高速道路を乗り継いで、前日中に米子入りして車中泊。当日は3時起床で、南光河原駐車場を4時半に出発した。
 前日までの雪のためトレースはないが、ルートは踏み固められており、新雪もそれほどでないため、順調に元谷まで進む。

 元谷からは軽いラッセルとなるが、雪は締まっており、前回に比べると歩きやすい。
 弥山と別山の分岐手前で登攀準備をする。準備後、しばらく石井・林組と一緒に北壁に向かってから、お互いの健闘を祈って別れる。
ガスの中に消える二人
 辺りは明るくなっているものの、濃いガスのため視界が効かない。
 弥山沢と思われる沢を右に横切ると、前方に二つの尾根が見えてきた。前方に向かって右側の尾根が別山中央稜だと思われたが、間違いは許されないため、確認のため左側の尾根に上がってみることにする。
 尾根からは、ガスの切れ間、弥山沢と思われる沢の向こう側に、西稜へ取付く石井・林組の姿が見えたことから、自分たちが幻のカンテ基部におり、小さい沢を挟んで西側にある尾根が中央稜だと把握できた。
浮かび上がる別山中央稜
 中央稜の基部を左から巻き、尾根に上がったところで登攀開始。
 トップの鹿野は順調にロープを伸ばし、ぐんぐん登っていく。自分もぎこちない動きで後に続こうと頑張るが、中央稜の下部は比較的傾斜が緩いため(自分にはそう感じる余裕もなかった)、あまり時間をかけないよう鹿野から言われる。
 確かに、後になって考えてみると、後半は嫌でも難易度が上がるため、どうしても時間がかかってしまう。登攀ルート全体の構成から判断して、できるだけ前半のうちに時間を稼いでおいた方が得策だと思う。
下部の雪稜を進む
 中盤からは岩稜が立ってくる。さすがに弥山西稜よりも着雪は少ない印象。
 下を見ると、後続が2組いることに気づいた。要所にハーケンやリングボルトはあるが、強度的にどのくらい信頼できるのか分からないため、体重をかけることは躊躇われる。
 鹿野はかき出したブッシュや凍結した岩に器用に支点を構築していくが、雪の下の岩はグラグラと動くものもあり、さすがに慎重な登攀を余儀なくされていた。
 セカンドの自分は、寒さに震えながらビレイし、恐怖におののきながら登攀することを繰り返した。
渾身のクライミングをする鹿野
 いつの間にかガスは晴れ渡り、青空の下、北壁の全貌が姿を現す。しかしながら、高度感と足場の不安定さのため、それを楽しむ余裕もなく、寒さと恐怖でこわばった身体はスムーズに動いてくれない。
 とりわけ最終ピッチは怖かった記憶しかない。
 ようやく別山頂上に出ると、岩稜の上に雪が載ったナイフリッジが待っていた。そこから緊張しながら懸垂下降地点まで行くと、我々が直上した最終ピッチを後続がトラバースしているのが見えた。
 ここで自分がもたもたしている間に後続に追いつかれる。
全貌を現す北壁
別山頂上のナイフリッジ
 別山頂上からは稜線に向けて吊尾根が伸びている。
 後続パーティーは尾根上をクライムダウンしていたが、我々は懸垂で吊尾根の西側へと降り、そこから尾根を登り返した。
 傾斜が緩やかになったところで、ロープを片づけ、小休止。登攀開始からここまでの間、ゆっくりする場所がなかったため、行動食と飲み物を口にして、ようやく安全地帯まで辿りついたことに心底ホッとする。
 あとは稜線までの登りを詰めて、夏道登山道の9合目辺りに出た。鹿野と固い握手を交わす。
上から別山を振り返る
 ゆっくりする間もなく弥山頂上に向かうが、鹿野は疲れを感じさせない驚異的なスピードでどんどん進む。
 遅れながらも必死の思いでついて行くと、いよいよ弥山から縦走路に入る。
 縦走路ではらくだの背の辺りで数人の順番待ちが発生しており、そこで石井・林組と出会うことができた。
 好天の下、剣ヶ峰で4人そろって写真を撮影する。その後、鹿野と先を行かせてもらい、天狗ヶ峰から1636ピークを経由して下山。
 元谷は多くのツアー登山者であふれかえっていた。
縦走路に入る
剣ヶ峰にて仲間と
 今回の反省点を二つ。

 一つは服装の選択ミス。
 前回、弥山西稜を登った際、半そでTシャツ+薄手の長袖+アウターで少し暑さを感じたので、今回、半そでTシャツ+アウターで別山に挑戦した。ところが、弥山西稜に比べるとビレイ時間がかなり長く、取付までのラッセルで温まった身体はあっという間に冷えてしまった。
 北壁は太陽の光が届かず、登攀中、身も心も凍える思いだった。そのため、テンションも下がり気味となってしまい、気持ちが恐怖心に打ち勝てない遠因となったように思う。

 もう一つの失敗は、確保器の落下。
 今回、ATCガイドを使ってビレイしたが、別山頂上から懸垂下降で降りようと自分のハーネスを見ると、環付カラビナにあるはずのATCがなくなっていた。
 よく見ると、カラビナのゲートの部分にザックのベルトがはさまっており、完全に閉まっていなかったため、登攀中に落としてしまったものと思われる。
 予備の確保器を持っていたことで、深刻なトラブルとはならなかったが、こうした初歩的なミスが重大な事故につながることから、強く反省している。
  今回、天候に恵まれ、無事に山行を終えることができたが、天候が悪ければさらに難易度は上がると思われる。今の自分にとって別山は楽しく登れる山ではなかったが、浮かび上がったいくつかの課題を糧にして、いつの日か別山を楽しめるようになりたいと思う。
 最後に、的確な判断と驚異的な体力で山行をリードしてくれた鹿野さんに感謝したい。
( 文・写真:内田 )
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