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大山槍尾根から東尾根
山行日  平成26年3月15日(土)~16日(日)
天 候  曇りのち晴れ
メンバー  内田、CL石田(会員外)、SL鹿野陽(会員外)、稲垣(会員外)
行 程  (15日)
 奥大山スキー場駐車場7:30~環状道路8:00~キリン峠10:30~鉄柱ピーク11:30
~ジャンダルム基部12:30~槍ヶ峰13:20~天狗ヶ峰13:40~1636ピーク14:00
~駒鳥小屋15:30

 (16日)
 駒鳥小屋7:20~鳥越峠8:00~環状道路8:30~奥大山スキー場駐車場9:00
 大山の槍尾根に行かないかと石田さんに誘っていただいた。
 昨年、今井(故人)が雪の状態の悪さから撤退したルートである。今井のリベンジの意味も込めて是非にと参加させていただくこととなった。
 前日の深夜に奥大山スキー場に到着。
 当日は7時半に出発、車通行止めのゲートを越えて、環状道路を歩いて行く。
 昨年の2月は、いきなり環状道路からラッセルだったそうだが、今回、既に道路の除雪は進んでいる。それでも例年と比べて雪は多いそうで、左右は自分たちの身長を越える雪壁が続く。
 鍵掛峠手前のカーブで道路を外れ、ワカンを装着した後、トレースのない雪面へ入っていく。
除雪の進んだ環状道路
 思ったより新雪があり、気持ちの良いブナ林の間をラッセルで進む。視界はクリアなため、キリン峠までの尾根筋も良く見える。
 左手に文珠越を見ながら、なだらかなところを通ってキリン峠手前で小休止をとる。途中、小さな尾根を越えるところで、小規模ではあるが、緩んで割れた雪面の上に新雪が積もり、ヒドンクレバスのようになっている箇所があった。
 キリン峠からは風が強くなり、見上げると槍ヶ峰はガスの中。キリン峠から少し行ったところで、アイゼンとハーネスを装着し、雪煙の舞い上がる稜線を登っていく。
 強風とガスの中、黙々と登っていくと鉄柱ピークに出た。視界は悪く、目の前に伸びている槍尾根の状態もよく見えない。
雪煙の上がる稜線を行く
ガスに包まれる鉄柱ピーク
 このあたりから雪が深くなり、スピードが落ちる。
 深いところで、密度のある雪が腰近くまであり、風で顔に吹き付けられる雪の粒が痛い。気がつけば気温も下がり、アウタージャケットのジッパーが凍っていた。
 切り立った尾根の右側には雪庇が張り出しているため、CLの指示で稜線から2mほど左を進んでいくが、強風とガスでどこが稜線なのか分かりにくい。
 自分が先頭を進んだ際、思わず稜線に近づいてしまい、突然、雪庇が崩れてしまったときは肝を冷やした。
稜線上のラッセル
 そのうち、ガスの中に岩壁が浮かび上がり、そのルンゼ状の雪付を登っていくと、ナイフリッジの尾根に出た。
 CLによれば、ここがジャンダルムだろうとのことだが、どうも今回とったルートが記憶とぴったり一致しないらしい。
 相変わらず視界もなく、ルートに確信が持てないため、一旦、後退の指示が下りる。先ほどつけたばかりのトレースは既に消えており、再び雪に埋もれながら、現在地が分かるところまで引き返す。

 吹き付ける雪と風の中、寒さに震えながら待機していると、先ほどの岩がジャンダルムで間違いない、先に進もうとCLから声がかかる。
 鹿野を先頭に再びトレースの消えた雪稜を進む。先ほどのナイフリッジを越えて、しばらく進むと、ガスの中にぼんやりと大きな岩の壁が見えた。槍ヶ峰だ。
ガスに浮かび上がる槍ヶ峰
 槍ヶ峰の基部からは尾根の西側を左上へとトラバース気味に上がっていく。
 雪面は傾斜がある上、完全にクラストしているため、アイゼンの前爪を効かせて、ピッケルをダガーポジションにして登った。
 トラバースしているため、直登するより気を遣う。たいした距離ではないが、この傾斜で落ちたら止まらないだろう。緊張のあまり必要以上に力が入ってしまった。
槍ヶ峰基部からトラバースを開始
 槍ヶ峰を越えてからもしばらくラッセルが続いた後、ようやく天狗ヶ峰に着く。
 この頃から天候が回復し、自分たちの登ってきた槍尾根や三鈷峰への稜線が見渡せるようになった。
 剣ヶ峰方面の稜線にはかなりの雪庇が発達している。ここで鹿野が持ってきた今井のピッケルを天狗ヶ峰に立て、故人を偲んだ。
辿ってきた槍尾根のライン
 天狗ヶ峰からは緊張しながら1636ピークに下り、アイゼンを外して小休止。あとは東尾根を下るだけとなる。
 何回か振子沢側をトラバースした箇所があったが、かなりクラストしている斜面もあり、慎重にクライムダウンする。
 気温も上がり重たくなった雪にうんざりした頃、ようやく駒鳥小屋に到着。すっかり埋もれた小屋を苦労して掘り起こした後は、快適な夜を過ごすことができた。
東尾根をトラバースで下る
掘り出した駒鳥小屋入口
 翌日は6時前に起床、豪華な朝食をいただき、7時過ぎに出発した。
 小屋の裏手からラッセルで鳥越峠へ向かう。朝から快晴で、鳥越峠では振子沢へ行くというスキーヤー2名と出会ったほか、奥大山スキー場までに何人もの登山者やスキーヤーとすれ違った。
 二日目の鳥越峠まで誰にも出会うことのない静かな山行だった。風と雪の厳しい状況の中、山と向き合うことができたのではないかと思う。
 アルパインでは気持ちが大事ということを教えてくれた石田さん、未熟な自分を技術的・体力的にバックアップしてくれた鹿野さんと稲垣さんに深く感謝したい。
( 文:内田、写真:内田、稲垣 )
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