|
日向神マルチピッチ(正面壁ゲンゾウルート)福岡県八女市 |
|
|
|
|
山行日 |
2014年5月10日(土) |
天 候 |
晴れ |
メンバー |
松並、内田、石田(会員外) |
行 程 |
奥日向神キャンプ場P8:10~登攀開始8:25~登攀終了15:30~
下山開始15:45~下山16:35~奥日向神キャンプ場P16:45 |
|
|
|
|
内 容
人工登攀をやってみたいと思っていた。
フリークライミング全盛の時代では、アブミを見かけることもほとんどないが、何がなんでも岩壁を突破しようとする人工登攀の泥臭さに憧れを感じていた。
この度、人工登攀の話があり、3月末には計画を立てていたが、なかなか週末の天気に恵まれず、ようやく日向神に行けたのは計画からひと月以上も経ってからだった。 |
|
|
|
5時30分に小月を出発、すぐに高速道路に入り、広川ICで降りた後、一路、日向神へ向かう。
奥日向神キャンプ場駐車場に到着後、登攀具を身に着け、5分で取付きに。
最初、道なりに進むと目の前に新しいボルトが見えたため、そこが取付きかと思ったが、石田さんの記憶でその右奥に行くと、苔むした壁にリングボルトが見えた。ゲンゾウルートの取付きだ。
思っていたよりも壁がそそり立っている。 |
|
|
|
|
苔むした取付き |
|
|
|
1ピッチ目
石田さんのトップで登攀開始。今回、最初から最後までトップを務めていただくことになる。
出だしが完全に苔に覆われているため、左側から回り込んでスタートを切る。
途中、ブッシュが張り出した箇所があったが、石田さんが取り払ってくれた。
2番手に内田が続くが、いきなり苔で足が滑って登れない。結局、松並の肩を借りて、ようやくスタートすることができた。
終了点近くに、打ち込みの浅いボルトとリングの切れたボルトがあった。
2ピッチ目
引き続き、古いリングボルトを使って、アブミの掛け替えで登って行く。
リングボルトの間隔は自分が想像していたよりも遠かった。アブミの最上段に足をかけることなどないだろうと甘く考えていたので、ボルトが老朽化していることもあって、かなり緊張を強いられた。
相変わらずホールドはほとんどない。 |
|
|
|
|
アブミの最上段を使う |
|
|
|
3ピッチ目
ネットで公開されているトポ(岩場のルート図)や他の記録を見ると、通常、2ピッチで登るところを我々は3ピッチで登ったようだ。
なお、基本的に終了点ではハンギングビレイ(支点にぶら下がりながらビレイすること)となる。
最初に感じた怖さはそのうち慣れてくるが、時間が経つにつれ、腰に負担がかかってくる。
ボルトに足を置くこと、アブミを太腿に通して体重を支えることなど、少しでも楽にビレイするためのコツについて石田さんに教えていただいた。 |
|
|
|
|
ハンギングビレイの足元 |
|
|
|
4ピッチ目
終了点ではギアを落とすことのないよう、一つずつ確実に渡す。
受け渡しを済ませると、すぐに登り始める。上部の小ハングを越えると、ようやく傾斜が落ち着いた。 |
|
|
|
|
小ハングを越える石田さん |
|
|
|
5ピッチ目
傾斜が落ち着き、ボルトの間隔もそれまでより遠くなる。
ここからはフリーで登る人もいると石田さんから聞くが、人工に慣れた身にはそんな気持ちになれない。登攀開始からかなりの時間も経過していたため、ヌンチャクを掴みながら、とにかく登る。
この時点で昼の1時。取付いてから4時間半が経過している。ここまで水分補給もしなかったが、ようやく小休止。パンを3人で分け合った。
6ピッチ目
気が付けばピーピーと変な音が聞こえる。石田さんによれば、近くで営巣中のハヤブサが威嚇しているのだろうとのこと。確かに頭の上をハヤブサらしき鳥が旋回している。
このピッチを松並はフリーで抜けていた。 |
|
|
|
|
6ピッチ目をフリーで抜ける松並 |
|
|
|
7ピッチ目
だんだん終わりが見えてきた。
長時間にわたる登攀で集中力が途切れそうになるのを堪えて登る。
途中に新しいボルトがあった。以前、石田さんが抜けたボルトの代わりに打ち足したものだと気づく。 |
|
|
|
|
6~7年前のものとは思えないきれいなボルト |
|
|
|
8ピッチ目
いよいよ最終ピッチ。
最後の岩壁の頭を越えるのが、高度感も抜群で怖い。自分はアブミを使って何とか抜ける。
その後は階段状となり、立木でとった終了地点へ。
3人で握手を交わす。 |
|
|
|
|
最後の岩を越える石田さん |
|
|
|
およそ7時間の登攀を終えて一休み。
石田さんの指示により、ロープとギアを片付け、万が一の時のためにハーネスと下降器だけ身に着ける。
後は下山するだけであるが、この下山がまた一苦労だった。
終了点から北に向かって少し進み、尾根上に出ると、そこから西側へ下る。道はあるような無いような、わずかな踏み跡があるのみ。
一旦、北に向かってトラバース気味に下った後、南に向かって高度を下げていく。途中、茂みがガサガサと動いたかと思うと、獣が反対側に転げるように逃げて行った。
急な下りとヤブにうんざりした頃、岩座に安置された石仏が出迎えてくれた。ようやく気持ちがほっとする。
そこから道なき道をさらに下ると道路に出た。経験者がいなければ絶対に迷っていたと思う。 |
|
|
|
|
ヤブの中を下山する |
|
|
|
今回、初めて人工登攀を経験することができたが、石田さんから技術的なことを含めて多くのことを教えていただいた。
中でも印象に残っているのは、気持ちを強く持つこと。技術や体力はもちろん必要だが、気持ちが挫けてしまうと、そこから登れなくなってしまう。何がなんでも岩壁を突破しようとする強い気持ちは、山行形態を問わず、山屋にとって不可欠なものなのだと思う。
今回の経験を生かして、次こそはトップを務めたい。 |
|
|
|
|
石仏が出迎えてくれた |
|
|
|
( 文:内田、写真:松並、内田 ) |
|
|
|
|
|
|
|