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空木岳 (中央アルプス縦走③)
山行日  2014年7月30日
天 候  晴れ
メンバー  斉藤(宗)  斉藤(滋)
行 程  木曽殿山荘(4:50)~ 第1ピーク(5:50)~ 空木岳山頂(6:47-7:18)~
空木平避難小屋(8:24)~ 尾根合流点(8:45)~池山小屋水場(12:22)~
林道終点(13:30-13:40)~(タクシー)~ 菅ノ台駐車場(14:10)
 内 容

 宿泊者全員で寝ている大部屋からそっと下り1階で荷物を整える。今日も長いコースになりそうだ。早めに出発する。
 小屋の前からのいきなりの急登、空木岳への石ころだらけの痩せ尾根を、ゆっくりと登り始める。
 少しずつ高度を上げるにつれ、出発した山荘や昨日下った東川岳から連なる木曽駒への長い稜線が目に入る。行くてには荒々しい空木岳の岩、岩、岩。迫りくる岩場に備えて今日もスリングのハーネスを着ける。(結果、無くても大丈夫だったが)岩場の〇印を確認しながら登ると第1ピーク(標識あり)に出る。単独行の若い男性が追いついて来た。振り返れば後続の登山者の姿がチラホラ見える。先を急ぐとしよう。
早朝の空木岳 第1ピーク
 さらに荒々しさを増した第2ピーク、垂直の岸壁の下を巻き大岩が連続する急な斜面に取りつく。
 先行のMの足取りを見ながら忠実に後を追う。昨日かなり鍛えられたので少しは慣れたのか、持病の高所恐怖症の症状はない。第2ピークを越え鞍部に下り立つとついに山頂ピークが現れる。岩、岩、岩で囲まれた荒々しい姿、何処をどう登って行くのだろう?
間近に迫った空木岳山頂ピーク
 山頂ピークの取りつき(岩場)で下降中の登山者とすれ違う。年配の男性だが「30年ぶりに来てみたが、厳しいのにびっくりした。」と言われる。確かに高度差のあるこの岩場の下りは大変だ。それに30も年を重ねれば若い時のようにはいかないと思う。
 「行くぞ」Mのかけ声で登攀開始。急な岩場も要所々々に人工の足場(かすがい形)があり、基本の3点確保を守りながら踏み外さないように慎重に登りきる。
 もうこれで最後と思ったら、またまた難所に出くわす。大きな岩と岩の間の深い隙間(落ちても私なら途中で引っ掛かるかも)頼りのMは振り返りもせず先を行く。こうなったら自力で行くしかない。隙間に突き出た尖った岩に足を乗せ覚悟を決めて飛び移る。靴の底を張り替えたばかりなのでフリクションはバッチリ。山頂はもう近い。
雲上の御嶽山
 出発から2時間2864mの空木岳山頂に立つ。ホッとしたようなMの顏。登れた嬉しさよりも安堵感が先に立つ。
 山頂からの今までとはうって変わった穏やかな光景。駒石が白く光る池山への尾根、空木平の緑の原、遥か遠くは南アルプスの峰々、北に目をやれば若い時歩いた槍ヶ岳~穂高の稜線も。(しみじみと年を感じる)
空木岳山頂
山頂より駒石・空木平方面を見下ろす
 「斉藤さん」の声に振り返ると縦走友のメンバーのお顔。小屋で朝食を摂り1時間遅れ(?)で出発されても、もう追いつかれてしまう。それにしてもお互い名乗っていないのに「斉藤さん」とよく声がかかる。それもその筈、宣伝するつもりではないと思うが、Mのザックには《宇部 斉藤》と名札のように大きな文字。(嫌でも目に入る)おかげで柳井出身の東京の男性や、山口に3年住んでおられたという長崎の女性(鳳翩山に登っておられた)達から親しく声をかけていただく。

 そろそろ出発しようと準備していると、かの女性(Oさん)が「林道終点からタクシーに乗り合わせるからね」と言われる。昨日、縦走友のメンバーが下山地点からの長い林道歩きを避け、乗り合いでタクシー利用の相談をしておられたようだ。超スローペースの我が家は同じ速度で歩く自信が無く、仲間入りの名乗りを挙げることが出来なかった。事前に駒ヶ根市に送っていただいた資料でタクシーを呼べる地点(携帯の使用可能場所)タクシー会社の電話番号は把握している。

 ご厚意は本当に嬉しいが、やはり長いコースを同じペースで歩く自信が無い。その旨を伝え取りあえず出発する。駒石のある尾根コースも興味があるが、お花畑を期待して空木平コースに入る。緩やかな下りだが足元が悪く意外と時間がかかってしまう。みなさん尾根コースに行かれたのか2人きりの下山が続く。ここも少し盛りを過ぎたようだが、ハクサンフウロ、ウスユキソウ、クルマユリ等たくさんの花が咲いている。
空木平避難小屋からの空木岳
 空木平の避難小屋から一登りで、尾根コースと合流する。山頂までの様相とは一変して緑の樹林帯にホッとする。
 ヨナ沢の頭で後発の福島のKさんやOさん、名古屋のHさん(タクシー乗り合い纏め役の若い女性)に追いつかれる。まだまだ先は長いので、残念だが乗り合いは無理と伝える。案の定、大地獄の鎖場でもたつき、あっという間に遅れを取る。

 長い下りにうんざりし休みたいと思ったら、分岐標識の所で休んでいるKさんとOさん発見。待っていて下さった? 乗り合いは無理とはっきりお伝えしなければと口にすると「任せて、急いでないので一緒に行こう」と優しい言葉。こうなったら素直に甘えさせていただこう。Kさんを先頭に1パーティーとなって下って行く。

 合流から30分の歩きで池山小屋近くの水場に着く。「わぁ~ 待ってくれてたの!」と前を行くOさんの声。水場の傍には、柳井出身の男性、茨城の男性、纏め役のHさんの笑顔。どれだけの時間待っていて下さったのだろう?
 それぞれがそれぞれのペースで、出会ったり離れたりバラバラに下ったのに、最後のポイントで集まった7人。実力以上の山に挑んでしまったのか? どこか冴えなかった気分がこの一瞬パアーっと晴れた!! 言葉で言い表せない想いで胸がいっぱいに・・・。
池山小屋近くの水場で
 Hさんの号令の下、林道終点を目指して7人で進む。ツアー旅行の経験が無いがこんなのかなと思う。
 自分達が乗り合いメンバーに加えていただいてるなんてまったく認識がなかったMと私(故に足を引っ張ってしまったが)自然の流れでご厚意に甘えさせていただく。今度は遅れないよう懸命に歩く。
7人1パーティーで下る
 林道終点の東屋で待つこと5分、2台のタクシーが到着する。日帰り温泉行きと菅ノ台バスセンタ―行きに分乗することに。
 菅ノ台行きに乗る我が家はここで温泉へと向かうメンバーと別れる。茨城の男性が「今まで山に何度も登ったがこんなメンバーは初めて」と言っておられる。固い握手をみなさんと交わしタクシーに乗り込む。Hさんは菅の台駐車場からマイカーで温泉に駆けつけ打ち上げだとか。さぁKさんも我が家も今から宿探しだ。
木曽駒ヶ岳~空木岳断面図 累計標高3691m下っている
 3日間の縦走でクタクタになってしまった、2人で半人前の前期高齢者、翌日から雨の天気予報にホッとする。
 次に予定していた御嶽山登山は迷うことなく取り止める。軽く計画した木曽駒ヶ岳~空木岳の縦走だったが、帰宅後の膝痛、むくみに改めて厳しかったと実感する。
 知らず知らずの内に衰えていた気力と体力・・・。何とか歩けたのも出会ったみなさんのおかげだ。お名前を訊くことも無くお別れしたが(イニシャルだけはお伺いした)思い出す3日間の懐かしい1コマ1コマ・・・。感謝の想いでいっぱいだ。
( 文:写真 斉藤(滋) GPSデータ: 斉藤(宗) )
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