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奥岳川 川上本谷遡行(九州祖母山系)
山行日  平成27年9月4日~5日
天 候  曇り
メンバー  江本、高田、池本
行 程  4日
 宇部(18:50)~宇部IC~王司PA(19:45)~中国自動車道~九州自動車道~
東九州自動車道~大分米良IC~R7~尾平(24:00)

 5日
 尾平(6:00)~黒金山尾根取り付き点分岐(6:35)~川上本谷入渓(6:50)~
デケヤマ谷出合い(7:25~8:10)~烏帽子本谷出会い(9:05)~14m大滝(12:15~13:10)~
縦走路(15:10)~障子岳(15:14)~黒金山尾根分岐(16:05)~
黒金山尾根取り付き点分岐(17:45)~尾平(18:15~18:30) ~R7~大分光吉IC~
東九州自動車道~九州自動車道~中国自動車道~王司PA~宇部IC(23:20)
 川上本谷は、祖母・傾連山縦走路の東面に形成された奥岳渓谷の中でも一番知られている谷だと思う。
 文献などでもよく目にしていたこともあり沢登りを始めた頃から、一度は遡りたいと憧れていた谷である。
 何度か計画したことがあったが、天候など諸事情で実現していなかった。今回、高田、池本の参加でようやく遡行が現実のものとなった。
 これまで西中国山地の沢登りが中心であったが、今回、標高差1100mの川上本谷の遡行は中国山地とは違うスケールと充実感を味合わせてくれた。
 初日、王司PAで池本と合流し、高速道路利用で、24時に尾平に到着。
 翌朝というよりも数時間後に始まる遡行のことを考えて寝酒はせずにすぐさま就寝。時折近くで聞こえる鹿の鳴き声が不気味だったが、仕事の疲れもありすぐに熟睡。
 翌朝は予定通り5時に起床、6時出発。
 奥岳渓谷添いの登山道を右岸左岸と進み、途中、三枚谷に迷い込みそうになりながらも黒金山尾根登山道分岐から少し進んだ地点より入渓した。
 入渓してしばらくは滑床や滑滝が連続する渓谷美を楽しみながらの沢歩きだった。
 ただ、水で磨かれた滑床や滑滝は沢靴のフリクションだけでは強い水流に押し流されそうで、無意識に体に不必要な力が入り、自分でも少しぎこちない歩きになっているのが感じられた。
滑床から滑滝が続く
 ナメの続いた後はゴーロ帯となる。
 真直ぐ本谷を進んでいるつもりだったが、デケヤマ谷との分岐に気づかず、右岸から合流しているデケヤマ谷に入り込んでしまう。約30分遡行したところでどうも雰囲気が違う気がして3人で位置確認したところ、高田の読図で間違いに気づいた。
 すぐに引き返したが45分程度のロスをしてしまう。どの谷を遡行しても良いようなものだが、今日の課題は忠実に本谷を遡行し縦走路に抜けることである。ルート間違いを避けるため、ここから先は頻繁に位置確認をすることにする。
 分岐点まで戻ると本谷は倒木でおおわれており、これが分岐を見誤った理由の一つだが、少し進むとすっきりとした渓相に変わり滝が現れる。
 2段8mの滝は、水に磨かれて手がかりが少ないが、フリクションとバランスで通過。
水流が強く手がかりが少ない滝もスムーズに通過
 しばらく進むと少しずつ水量が少なくなり、ところどころ伏流水となり水音がしなくなる。転石に覆われた谷は傾斜も強くなりどんどん高度を稼ぐ。
伏流水となり、転石帯が続く
 再び水の流れる音が聞こえ始めると左岸から合流する谷に15mの滝がかかっているのが見える。烏帽子谷と思われるが、この分岐で位置確認のため一服。
 ここからはゴルジュの中に滝が連続する。
 最初はチョックストーンのある3mの小さな滝で左岸からザイルで確保し越える。下部はナッツを使用し、上部は残置ハーケンが2本ありこれを利用した。
 その次のチョックストーンはさすがに高巻くしかない。左岸を高田、池本が途中まで登ったがバランスを要求されるところがあり、安全のためザイルの確保が必要と判断し引き返してくる。仕切り直して高田がカムで支点を取りながら左岸をリードし、二人が後に続いた。
烏帽子谷との分岐を過ぎての滝を高巻く
 この後に続くチョックストーンと大岩はフリーで越える。
 5mの滝を直登した先に川上本谷で一番大きな14mの滝が現れる。上部がかぶり気味で直登は容易ではないように思われた。よく見ると左岸の草むらの中にバンドが確認できたので、そこから苔むしたフェイスを5m直上し回り込むと滝の落ち口に抜けることができた。
14mの滝(左岸高巻き)
 次の滝をフリーで越えると10mの滝が現れる。
 滝の抜け口には倒木が引っ掛かっているのが見える。直登できなくもないがシャワークライミングは避けて右岸を巻いた。
続く10mの滝(右岸高巻き)
 この後伏流水となり、水音は全くしなくなる。ガレたルンゼの登りが2時間弱続く。

 標高1530m付近で最後の枯滝を超えた後は、自然落石こそないが、浮石が多いために歩くことで落石を誘発するので気が抜けない。落石に注意しながら一人一人が互いの動きに注意しながらガレを登った。
 暗いルンゼに挟まった大岩を右から回り込んで越えた後に、単調なガレ場を上り詰めたところが縦走路だった。
 藪漕ぎなしで縦走路に抜けることができるところが良いというのはメンバーの一人の感想だが、私は落石に気を使いながら急登を登るよりは、傷だらけになりながらも藪を漕いで稜線や頂上に抜ける方が楽しいように思った。
詰めのガレ場を行く
     
涸れた滝をフリーで越えていく
 縦走路で少し休んだ後、空荷で展望の期待できない障子岳をピストンし、黒金山尾根への分岐点に急いだ。池本、高田のスピードにはついていけず自分のペースで歩いたが、コースタイム通り日の暮れる前に尾平の駐車場に着いた。そのころから時折小雨が降り始め、天気予報通り天候が悪化していることが感じられた。
尾平を後にして少しすると陽が落ちてうす暗くなり、雨は本降りになった。
 今回、長年の課題だった川上本谷を遡行してみてあらためて祖母山系の沢の魅力に気づかされた。
 この山域には多くのルートがあるので、他にもいろいろ遡行したいと考えているが、それにはルートを間違えないように読図能力の向上や、遡行時間が長いので歩行スピードの向上が必要だ。
 沢登りは不確定要素の多い危険な遊びだが、だからこそ楽しいとも言える。沢登りを事故無く楽しむためには安全技術の向上が必要だが、それを図るためには、日頃のトレーニングと実戦経験を積むことが必要だと感じた。
 川上本谷遡行は、祖母山系での沢登りの楽しさを知っただけでなく、学ぶことの多い山行でもあった。
     
トラック図
( 文、写真、トラック図 : 江本 )
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