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大山別山右尾根
山行日  2016年2月27日(土)
天 候  曇り(山頂付近は雪まじりの強風)
メンバー  内田、鹿野(会員外)
行 程  南光河原駐車場5:00~元谷5:45~別山右尾根取付のコル7:30~別山稜線11:00~
主稜線九合目付近12:10~六合目避難小屋12:40~南光河原駐車場13:00
 今シーズンの大山は雪が少ない。来週には暦も3月となり、春の陽気が来るのも今年は早いのではないか。行ける時に行っておこうと、二週続けて大山に向かった。
 毎度のことながら前夜に飲み過ぎるが、何とか4時に起床し、元谷へ急ぐ。トレースはない。まだ暗い中、鹿野が驚異的なスピードで飛ばしていくが、内田はペースが上がらず、ついて行けない。今回はほとんど鹿野にラッセルしてもらうことになり申し訳ない。
 ようやく明るくなると、次第に北壁の様子が分かってくる。やはり例年ほどではないが、先週よりも雪が付いている。
 気温も低く、コンディションは悪くないと思われた。
 弥山沢をトラバースして別山へ。さらに別山中央稜の末端を過ぎて、その右側のルンゼを右尾根へトラバースした。
 取付となるコルからは別山右尾根の様子がよく分かる。
 二人でルート取りについて意見を交わす。あまりカンテ寄りにいくと、ブッシュがうるさそう。
右奥のコルに上がる
 いよいよここから登攀開始。1ピッチ目は内田が行く。ブッシュが出てくるまで支点は取れないが、まだ傾斜はそれほどでないため、簡単な雪壁登り。ロープ一杯まで登ってピッチを切った。
1ピッチ目の雪壁を登る
 2ピッチ目は鹿野。このあたりから傾斜が立ってくる。雪の下に岩が混じった箇所が出てきて嫌らしい。ブッシュを使った木登りを交えて、鹿野が順調にロープを伸ばす。
傾斜が立ってくる2ピッチ目
 3ピッチ目は内田。傾斜はあるものの、ブッシュはそれほどでもない。
 ピッケルとバイルを使って高度を上げていく。この時まで視界は良好で、かなりの高度感となった。
 頭の上には少しずつ別山の稜線が近づいてくる。振り返ると4人パーティーが八合尾根を登っているのが目に入った。
3ピッチ目を登る
 そして核心となった4ピッチ目は鹿野が登る。
 ブッシュが濃くなり、足場も悪い。登っているときは冷静に考える余裕もなかったが、ほぼ垂直な岩混じりの壁にブッシュが生えている印象だ。行く手を阻むブッシュに押し戻されながら、頼りない枝を掴んで、じわじわと身体を引き上げ続けると、いつしか手の力がなくなっていく。
 ピッケル・バイルが引っ掛かり、いちいち邪魔になる。おまけに最後の稜線直下が完全な岩稜となっており、かなりの高度感の中、一挙手一投足に神経を集中させて、ようやく稜線に立つことができた。
 気がつけばガスに巻かれ、風も出ている上、足元は両側が切れ落ちている。このピッチはとてもトップで行く自信がない。
ブッシュがうるさい核心の4ピッチ目
稜線直下の岩稜
 ここでリーシュに繋いでいたピッケルがないことに気づく。おそらく4ピッチ目のブッシュの中で邪魔になったのを力任せに引き上げていたので、リーシュから外れてしまったのだろう。
 まだバイルがあるため、深刻なトラブルになることはなかったが、今後の反省としたい。探しに戻る気力もなく、ここは先を急いだ。
別山稜線を進む
 痩せた稜線上を吊り尾根分岐まで進むが、吊り尾根は雪の状態が悪そうだったので、懸垂で降りることにする。
 掘り返した支点を使って、別山沢側に懸垂下降し、別山尾根に登り返す。視界はますます悪くなってきたが、ここまで来れば一安心とこの時は思った。
吊り尾根の横を懸垂下降する
 後は別山尾根を主稜線まで詰めるだけ。
 濃くなってきたガスの中、尾根を外さないよう気をつけながら登っていくと、主稜線に合流する直前、スラブ状の尾根に足を踏み出した瞬間、突然、スラブ面全体がズズッとずれて、流れ落ちてきた。
 雪の厚みがなく、小規模だったため、事なきを得たが、肝を冷やす。もうすぐ主稜線という油断もあり、尾根上だったので雪崩のリスクは考えていなかった。気を引き締め直して、主稜線へ。
表面が20cmほど流れた斜面
 そして、主稜線に出た途端、猛烈な風に襲われる。
 雪まじりの強風で、目も開けていられない。油断すると内田の身体が吹き飛ばされるほどだ。
 急いでゴーグルを装着するが、ホワイトアウトのため視界はない。
 一瞬、ロープを出すことも考えたが、北壁に沿って少し西に進んだところで、無事ポールを発見。そこから強風に耐えながら六合小屋まで下った。
 ようやく安全地帯に到着し、鹿野と固い握手を交わす。今度こそホッとした。
 強力なパートナーのおかげで、目標としていた別山右尾根を無事に終えることができた。
 雪の状態にもよるのだろうが、今まで自分が登った北壁ルートの中では、今回の別山右尾根が一番難しく感じた。
 鹿野に感謝するとともに、自分なりの反省点もあるので、今後の山行に活かしたいと思う。
( 文:内田、写真:内田・鹿野 )
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