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雌鉾・比叡山マルチピッチ(宮崎県)
 
日 時  2017年11月3日(金・祝)~4日(土)
天 気  晴れ
メンバー  高田、林、内田
行 程  一日目:
山口~東九州自動車道~延岡~鹿川~雌鉾~「大長征」~鹿川泊

 二日目:
鹿川~比叡山~「TAカンテ」~「ニードル左岩稜ノーマル」~延岡~東九州自動車道~山口
 天気予報によれば、次の連休は岩登りに格好の天気となりそうだ。急遽、メンバーと日程が調整できたので、遠征でマルチピッチをやることに。宮崎県に来るのも今年3回目となる。
 当日早朝に山口発で、鹿川に7時半頃到着した。準備をしてから雌鉾へ出発。
 一般登山道を30分ほど歩いて、取付分岐を上がればすぐに大岩壁が目に入ってくる。雌鉾には初めて来たが、聞きしに勝る見事な光景だ。
 本日の予定は大長征ルート。早速、登りたいところだが、自分たちの前には10名のパーティーが取り付いたばかり。はやる気持ちを抑えて順番を待つ。
 ようやく先行全員がスタートした後を高田のトップでついて行く。最初の3ピッチは快適なスラブだ。聞いていた通りボルトは少ないが、フォローで登る安心感もあって、存分に景色を楽しみながら高度を上げていく。
見事な光景が広がる
 4ピッチ目の途中からトラバースに入る。先行が渋滞しており、度々、待機の時間が発生するが、待っている間も素晴らしい光景を眺めて気を紛らわすことができた。
 そして、突然、バンドの真ん中あたりでスタンスがなくなった。先行もここを越えるのに苦労して時間がかかっていたようだ。ソールが滑って振られることを考えると、のっぺりとしたスラブのトラバースは恐怖感が倍増だ。個人的にはこの箇所がルートの中で一番怖かった。
バンドを詰めるとスタンスがなくなる
 後から確認してみると、5ピッチ目で下にクライムダウンした記憶がないので、バンドの中間部分はトポとは違うルートを通ったのだと思う。改めて高田の突破力に感心する。
 ここで先行は中央バンドから美しいトラバースへ上がっていくので、ようやく自分たちのペースで進む。中央バンドの右端でピッチを切ってから、いよいよ大滝左ルートに入る。
大滝左ルートを登る
 小さなホールドを拾いながら着実に高度を上げていく。2ピッチで一の坊主の下に出た後、トラバースで二の坊主と三の坊主の間に入る。そこから二の坊主側面のクラックを登ったところが山頂だ。素晴らしい展望の下、最高の気分で仲間と握手を交わす。後は美味しいお酒が待っている!
この後は飲むだけ!
 ひとしきり山頂を楽しんでから、一般登山道で下山する。途中、大岸壁が一望できる展望台に立ち寄って、自分たちの登ったルートの全貌を見られるのが嬉しい。
 渋滞の影響のためか、この時間でもまだ登攀中のクライマーがいた。
 今晩の宿は、噂に名高い庵鹿川と決めていた。偉大な先輩方と酒を酌み交わし、素晴らしいクライマーたちと楽しい時間を過ごす思い出に残る一夜となった(いつものように撃沈して、自分の記憶は半分もないが…)。大変お世話になりました。
 翌日の朝は恒例の二日酔い。気合いで起床し、自分自身と闘いながら、比叡山へ向かう。今日は山口に帰らなければならないが、できれば二本登りたい。まずは、TAカンテを林トップで登る。
 さすが人気の比叡山。ここも先行がいるが、慣れた方々のようで待機時間はほとんどない。1ピッチ目で出だしの岩を右から回った後、2ピッチ目で左上して、カンテの基部に出ると、3ピッチ目からは快適なクライミングが楽しめる。
カンテの基部へ
 カンテと言っても、のっぺりとしており、ホールドが豊富なので、難しくはない。ただし、ボルトが少ないので、カム等は忘れずに。4、5ピッチ目も林が順調にロープを伸ばし、快適なコンディションの下、高度感を楽しめた。
青空へ向かって快適なクライミング
 登山道を使って下山すると、時間はまだ11時半過ぎ。二本目を登るには十分余裕がある。次はニードル左岩稜ノーマルへ。ここは内田トップでいかせてもらう。1ピッチ目はコーナーを詰めてしまい、ルート取りに失敗。上がったところは浮き石だらけで危なかった。
 核心と言われる2ピッチ目。高度感が出てくる中、フレーク沿いに登るがやはり難しい。残置された回収不能のカムやナッツが何とも痛々しく、何度もテンションをかけそうになるが、何とか終了点まで抜ける。フレークの後の右へのトラバースが怖かった。
厳しいクライミングが続く2ピッチ目
 3ピッチ目は快適なクライミングができるはずだったが、カムを1セット+αしか準備していなかったので、最後はかなりのランナウト。ここまでボルトがないとは思っていなかったので反省しきりだ。おまけにロープが吹き飛ばされるほどの強風で、強いプレッシャーと寒さのため、この時点で心が折れそうになった。
ニードルの頭へ
 それでもニードルの頭から一旦コルへ懸垂下降し、Aピークを目指して4ピッチ目を登る。出だしのフェースが見た目より悪く、バランスを崩してしまった。高さがないので幸いにも怪我はない。
 だんだんと時間が押してくる中、5ピッチ目へ。南面と比べて日当たりが悪く、相変わらず寒さに震えながらのクライミングとなる。前半のレイバックに耐えれば、後は問題なし。
 6ピッチ目も出だしが悪いが、そこを越えれば、難しい箇所はない。ようやくAピークに到着だ。気がつけば15時半。やはり3人のため時間がかかってしまった。下山は懸垂下降2ピッチで、後は明瞭な踏み跡を辿って登山道へ。
もうすぐAピーク
 無事にクライミングを終えることができたことに三人で感謝し、人気の少なくなった比叡山を後にした。

 やはり宮崎の岩場は素晴らしい。信頼できる仲間と一緒に昼も夜もみっちり楽しませてもらった。毎度のことながら整備してくださった方々に感謝したい。
( 文:内田・写真:高田、林、内田 )
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