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三倉岳下の岳ノーマルルート(広島県大竹市)
 
 
日 時  平成30年11月17日(土)
天 気  晴れ
メンバー  内田、鹿野(会員外)
行 程  山口~岩国IC~三倉岳キャンプ場駐車場~Bコース~下の岳分岐~下の岳下部取付9:15~下部終了12:25~上部取付13:05~上部終了14:55~グレータワー取付地点~駐車場~岩国IC~山口
 以前から宮崎遠征を予定していたが、週末の天気予報は西日本の広い範囲で雨マーク。コンディションが悪そうなので、近場の岩場にしようと話していたところ、直前になって予報が好転し、東の方なら登れそうだ。
 鹿野と相談して、登ってみたかったルートの一つである三倉岳下の岳ノーマルルートに行くことにした。
 駐車場からBコースを上る。下の岳下部への分岐が分かるかどうか不安だったが、はっきりとした踏み跡があり、たいした苦労もなく取付に到着した。
 噂に名高いグレータワー。取付から見上げる岩肌を自分が登る日がくるとは思わなかった。ただ、フリーで登れないのは明らかなので、今回、人工登攀を前提にアブミとちょんぼ棒を準備する。それでも、生半可な気持ちでは無理だろう。必ず上まで抜けようと鹿野と言葉を交わして取り付いた。
 つるべで登ることにして、下の岳下部1ピッチ目は内田がトップ。出だしのフェイスは躊躇せずアブミを使って越え、中間のワイドクラックに入る。エイドでもクラックへの入り口が微妙だった。
 クラックの中は落ち葉が詰まっているため、それをかき出しながら、少しずつ身体を上げていく。時間をかけて、何とかクラックの最上部まで達した後、右のカンテに出た。
 そこから終了点までの短いスラブで行き詰まる。手も足もどこに置けば良いのかさっぱり分からないのだ。しばらく逡巡した後、目を閉じて深呼吸し、気持ちを落ち着けてから、えいや!でテラスに上がり込む。無我夢中だが何とか1ピッチ目を抜けることができた。
 
綺麗なワイドクラックが走る1ピッチ目
 2ピッチ目はグレータワーのてっぺんまで綺麗すぎるスラブが続く。遠いボルトにプレッシャーがかかるが、鹿野は思い切って足を上げ、器用に登っていく。
 スラブに慣れていない自分には相変わらずホールドスタンスが分からず、とても真似できない動きだ。そのままスラブを上がり、右のカンテ沿いに進むと、グレータワーのピークに終了点がある。安定はしているものの、高度感が物凄い。
 
グレータワーのピークに向かって登る鹿野
 3ピッチ目はグレータワーから向かい側の岩への飛びつきが有名だ。吸い込まれそうな足下の裂け目を見ないようにして、思い切って足を出し(鹿野は手を出していた)、対岸に渡る。
 とりあえずひと息つくが、そこから浅いクラックを直上するのが難しそう。ここは左にトラバースしてクラックを使って登った。カムに体重をかけてトラバースをするのが怖い。
 
左のクラックを使って登る
 4ピッチ目もカンテ沿いとはいえ、見事としか言いようのないスラブ。これをフリーで登れるとはとても思えない。
 それでもA0を交えて、鹿野がボルトを拾って進んでいくと、ぴたりと動きが止まる。どうやらかなり悪そうだ。一瞬、考えたようだが、再び動き出すと、じわじわと身体を寄せて見事に抜けきった。その上でルートが交差するので、確認のために一旦ピッチを切る。
 内田がフォローで続くと、5つ目のボルトの後、支点がなくなることを知った。三倉のスラブは本当に恐ろしい。
 
最後のボルトからも悪い
 トポでルートが間違っていないことを確認してから、5ピッチ目(トポでは4ピッチ目の後半)を登る。それまでのスラブと比べると大分ましだ。喜んではいけないが、ここでピッチを切ってくれた鹿野にひそかに感謝してしまった。
 6ピッチ目(トポでは5ピッチ目)は下の岳下部の最終ピッチとなる。上に張り出す菱形のハングが特徴的だ。
 鹿野は出だしこそA0で越えたものの、その後は安定した登りで危なげない。見事なステミングでハングの下まで詰めた後、するりとハングを左から抜けた。内田がフォローで続くが、抜け口が思ったよりも悪かった。
 
見事なステミングで安定のクライミングを見せる
 とりあえず下の岳下部を無事に終了したことに安堵するが、既にお互いの気持ちは次を向いている。ここまでも、そして、ここからも気を抜くことはできない。
 過去、下部から上部までの草付で滑落事故があったとも聞く。目の前の岩を右から巻くようにして、しばらく踏み跡を進むと、その先にフィックスロープが設置された5mほどの下降がある。そこから左上方へ進み、岩の間を抜けていく。
 少し分かりにくい箇所があるが、踏み跡を外さないよう気をつけて進むと、トポに載っている取付っぽい場所に出た。左下にボルトが見える。ここが下の岳上部の取付で間違いないだろう。
 下の岳上部1ピッチ目は上のチムニー入口の立ち木を目指してルンゼを登っていく。雨が降ると水の流れ道となるようだ。特に難しい箇所はないが、岩が脆くて気持ち悪い。
 
上のチムニーを目指してルンゼを登る
 チムニー入口の立ち木でピッチを切って鹿野と交替。
 下の岳上部2ピッチ目は上のチムニーではなく、立木から左のチムニーに入る。トポによればバリエーションⅠに向かうようで、本来ならピッチを切らずに続けて登るのだろう。距離としては短いが、チムニーの中には桧の木が生えており、足下の落ち葉と行く手を阻む枝で抜けるのに相当苦労する。
 フォローの内田は思わずロープを掴んでゴボウで抜けてしまった。
チムニーの中の桧にてこずる
 
 下の岳上部3ピッチ目はバリエーションⅠとなる。縦に走るクラックからカンテに向かって右上するようだ。下から見える範囲にボルトは一つしかない。クラックにカムを連打でセットして、さらにアブミも使う。それでもカンテにある支点が遠すぎる。
 最後は必死になって、ちょんぼ棒を振り回し、ボロボロになってカンテに辿り着いた。カンテに出てしまえば一安心だが、これで5.10aとはため息がでる。
カンテに出るまでが苦労させられる
 
 下の岳上部4ピッチ目はトポでも3級とあるように、落ち着いて進めば問題ない。
 右手に見える中の岳や上の岳の様子から判断するに、下の岳の山頂も近いはず。鹿野が最後のフェイスの手前でピッチを切った。
目の前の岩を越えればピークが待っている
 
 最後の下の岳上部5ピッチ目はフリーにこだわらなければ、抜けること自体は難しくない。フェイスを越えた上の岩を乗っ越すと、ようやく岩はなだらかとなり、目の前に下の岳の山頂が見えた。
 足元に並置されたボルトが今回のクライミングの終わりを告げている。最後の終了点でフォローを迎え、5時間半以上の奮闘を確かめるように、ボロボロになった手で鹿野と固い握手を交わす。無事に山頂まで抜けたことに思わず声が出た。
 喜びを分かち合った後、ロープを片付け、山頂を踏んでからAコースを下山する。グレータワーへの分岐を間違えながらも、無事に取付まで戻ったが、Aコースからも明瞭な踏み跡がついていた。
 念願だった下の岳ノーマルルート。今の自分の持てる技術と道具を総動員してもなおギリギリの登攀だったが、鹿野のおかげで、無事に山頂に抜けることができた。
 つるべで登らせてもらったことを含めて、強力なパートナーに感謝したい。
( 文:内田、 写真:鹿野・内田 )
 
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