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大崩山小積ダキ中央稜(宮崎県延岡市)
 
 
日 時  平成30年12月1日(土)
天 気  晴れ
メンバー  内田、鹿野(会員外)
行 程  山口~東九州自動車道~延岡~祝子~登山口6:15~大崩山荘前~湧塚分岐~小積ダキ取付7:50~登攀開始8:10~中央ベランダ~チムニー取付11:00~小積の頭15:00~大崩山荘前~登山口16:40~延岡~東九州自動車道~山口
 クライミングを始めた頃から憧れていた大崩山小積ダキ。今年の春から小積ダキ中央稜を計画していたが、なかなか天気や都合が合わず、気がつけば今年も残り一か月となっていた。この度、天気予報を見ながら、鹿野と予定を調整し、ついに大崩山に行けることになった。
 前夜、山口を発ち、登山口近くでテントを張って作戦会議。毎度のとおり飲み過ぎて、起床がつらい。5時起きの予定が、5時30分となってしまう。バタバタと準備をしてから、暗い中ヘッドライトを付けて登山口を出発した。
 大崩山荘前を過ぎて、三里河原と湧塚コースの分岐あたりで空が明るくなる。湧塚コースを尾根に取り付く手前で登山道から外れ、そのまま小積谷を詰めた。
 取付地点の手前で北壁方面に流されてしまったが、すぐ間違いに気づいて修正。8時前に三方を岩壁に囲まれた小積ダキの取付地点に到着した。
 ギアと気持ちを整え、いよいよ小積ダキの登攀開始。今日一日どんなクライミングになるのか身震いがする。
 今回もつるべでいくことにし、1ピッチ目は内田。アブミを使ったA1でフェイスを登っていく。少し遠い箇所もあるが、ステンレスのハンガーボルトが連打されており安心感はある。足りなくなるのでヌンチャクを間引いて登り、終了点は狭いチムニーに入った。
 
三方を岩に囲まれた1ピッチ目
 2ピッチ目は鹿野。A1でチムニー上のハングを越え、順調にロープを伸ばす。出だしで古いリングボルトを使わなければならないのが怖く、フォローで内田が体重をかけた時、リングが伸びて肝を冷やした。それ以降は綺麗なハンガーボルトが続くが、それにしても40mのアブミのかけ替えは長い。
 
2ピッチ目のハングを越える
 3ピッチ目もA1。中間部分のフレークが使えるので有難い。ここまで基本的にはアブミのかけ替え作業の繰り返しで、じわじわとしか進めず、時間がかかった。
 4ピッチ目からクライミングらしくなる。左手から右上するバンド沿いに上がり込み、一旦、テラスに降りた後、クラックの入るスラブを登った。スラブの抜け口に少し染み出しあり。終了点の上が中央ブッシュ帯となる。これで小積ダキ下部は無事に終了。
 
クラックの入るスラブ
 中央ブッシュ帯に入り、踏み跡を辿ると、間もなく見事なチムニーの前に出た。ここが小積ダキ上部の取付に間違いない。とりあえず一安心してここで小休止。時間も目標としていた11時の少し前に到着でき、今のところ順調だ。しかしながら、この後の上部で小積ダキの厳しさについて身をもって知ることになる。
 小積ダキ上部の最初となる5ピッチ目は、トポでは35mとあるが、ロープの流れが悪くなるので、下のチムニーと上のワイドクラックで分けることにする。下のチムニーは7~8mだろうか。すっぽりと身体が入る広さなので、四肢や背中を突っ張って登れば、安定させやすい。ただ、チムニーの中を奮闘中にルベルソを落としてしまった。予備を持っていたので問題なかったが、道具の取り扱いが雑になっていたのだと反省。フォローの鹿野に回収してもらった。
 チムニーを抜けた左のテラスで、一旦、荷上げをしてから、そのまま鹿野が6ピッチ目を進む。5~6mの簡単な歩き。次のワイドクラックの取付に終了点があった。
 チムニーに続けて、ワイドクラックを登るのは気が進まないが、順番なので仕方ない。7ピッチ目はクラックに思い切り左半身をねじ込んで、ずりずりと上がる。身体が落ちないよう、左手と左足を岩奥に押し込み、無我夢中で登った。抜け口も張り出した岩が邪魔で体勢が悪い。腹這いになって、最後までずりずり。少し上がったところの立木でピッチを切った。自分の要領が悪く、その後の荷上げに時間がかかってしまった。
 
ワイドクラックでも奮闘させられる
 8ピッチ目は、一見、どこを進むのか分かりにくいが、秘密の抜け穴のようなトンネルを通って下の窓へ。ザックが重く膨れているので、穴を抜けるのが一苦労だ。下の窓に出ると、目の前に湧塚の岩塔群の見事なパノラマが広がり、一気に高度感が出る。ここからが中央稜の真骨頂だ。
 9ピッチ目はクラックを辿って、ジェードルへ。小積ダキ下部とは打って変わってボルトが遠く、少なくなる。高度感のあるクライミング。ロープを40m伸ばしたジェードルの中に終了点があったためピッチを切ったが、そのまま5~6m上がって上の窓まで上がった方が良かったかもしれない。
 
下の窓から左上のジェードルを目指す
 10ピッチ目はジェードルを進み上の窓へ。ここもボルトが少なく、カムは必須だ。上の窓には特徴的な岩角がある。さらに2mほど上がり込んだところからA1による右トラバース。突き抜けた高度感に晒されて、錆びたリングボルトに体重をかけるのは本当に怖い。
 ここは鹿野が素晴らしい登攀を見せた。トラバースの後もボルトが乏しく、緊張が途切れることはない。脆いクラックを拾ってジェードルを上がる。まさに核心のピッチと言えるだろう。フォローでも頭が痺れるような緊張感を味わった。
 
突き抜けた高度感に晒される右トラバース
10ピッチ目終了点から下を見る
 
 ここまで来れば終わりは近いはず。しかし、まだまだ気を緩めることはできない。気持ちを奮い立たせて11ピッチ目を進む。下が切れ落ちたスラブを2~3m右トラバースしてから、左上のジェードルに入っていく。
 ここもジェードルの中が悪い。セットしたカムが抜けないことを祈って、カムを掴んで身体を引き上げる。ジェードルを抜けた左上にリングボルトが並置された終了点があった。
トラバースしてから左上のジェードルに入る
 
 最後の12ピッチ目は錆びたリングボルトを辿って、スラブを進む。ここでもアブミは必要だ。目の前には小積ダキの頭が見えているが、最後まで気を抜くことはできない。このピッチはトポに載っていない?
最後まで気は抜けない
 
 最後のピッチを終えてからも、念のためロープを繋いだまま右から回り込んで、小積ダキの頭に立つ。時間は15時。取り付いてから7時間近い奮闘になる。無事に小積ダキを抜けた喜びのあまり、思わず鹿野と抱き合った。今回ばかりは達成感よりも、ようやく終わった感をかみしめる。やっとのことで緊張感から解放され、しばし放心した。
 後はギアを片付けてから坊主尾根を下山。これなら明るいうちに車まで戻れそうだ。不思議な岩の造形に見とれながらも、ハシゴの連続にうんざりして、登山道を車まで急いだ。
 念願だった小積ダキ中央稜。中央ベランダの下部と上部とでは安心感がまるで違う。上部は精神的な強さが求められる厳しいルートだった。
 50年以上も前にこのルートが拓かれた当時の情熱には本当に頭が下がる。小積ダキの頭に立った時、もっとタフなクライマーになりたいと思った。
( 文:内田、 写真:鹿野・内田 )
 
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