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燧ケ岳
熊沢田代から燧ケ岳を望む
山行日  2015年7月27日
天 候  晴れ
メンバー  斉藤(宗)  斉藤(滋)
行 程  御池登山口(5:10)~広沢田代(6:20-6:40)~ 熊沢田代(7:40-8:00)~
 俎嵓(9:20-10:00)~柴安嵓往復 ~ 俎嵓(11:00-11:15)~長英新道 ~
 尾瀬沼分岐(14:45)~ 長蔵小屋(15:30)泊
 午前3時目覚める。身支度を整え御池ロッジから隣接の御池登山口駐車場に移動する。
 標高2356m東北一の標高を誇る燧ケ岳に登頂の朝を迎える。前回は群馬県片品村(大清水)から入山したが、いつか福島県桧枝岐村から登りたいと思っていた。
 ガイド本やテレビで目にしたあの美しい光景を早く見たい。会津駒ヶ岳で傷めたMの膝もどうにか痛みが治まったようだ。標準タイム4時間の登りを6時間かけるつもりでいけばなんとか登れるだろう。

 火山特有のゴロゴロした岩の登山道をひたすら登る。一番(?)に出発したがノンビリ登っていると追い越され始める。みなさんの背中には可愛いザック、我が家のようにギュウギュウに詰め込んだ大げさなザックの人は一人もいない。食事つきの小屋泊まりの今回こそは・・・と荷物の減量を試みたが、どうしてこうなってしまうのか? 過去の惨めな経験が甦り可能な限り対処できるようにとついついあれこれ詰め込んだ結果だ(進歩がない)

 樹林帯からいきなり開けた湿原に飛び出る。御池からのコースを選んだ理由の一つ広沢田代に到着だ。ずっと憧れていた場所にようやく来れた。ここまでの急登の疲れが一気に吹き飛ぶ。カメラを手に足が進まなくなり、前を行くMとの距離がドンドン開いていく。湿原を埋め尽くすキンコウカやモウセンゴケ、ワタスゲ・・・。十分時間はある。そんなに急がなくてもゆっくり行こうよ(また膝が痛くなるよ)
キンコウカ咲く広沢田代を行く
 再び樹林を抜けさらに広々とした熊沢田代に到着。
 前方に燧ケ岳が迫って来る。まさにこの世の楽園、湧き上がる感動を上手く表現できず「凄いね」「凄いね」と同じ言葉を繰り返す。
 池塘の畔のベンチで休みながら水面に映る景色や足元のサワランを眺め、美味しい空気を胸いっぱい吸い込む。贅沢なひと時だ。
熊沢田代を振り返る
 足場の悪いゴロゴロ岩帯を抜けると雪渓が現れる。アイゼン装着とまではいかないが(あれば安心)クラスト気味の急斜面に緊張する。
 真新しいMのステップ跡を忠実に辿っていると後続の登山者も続いている。しんどいアルバイト(膝は大丈夫?)姿をカメラに収めたいが不安定な足場では上手く撮れない。

 なんと予想より速いコースタイムで俎嵓(マナイタグラ)ピークに到着、Mと健闘を称えあう(標準タイムを大幅に超え、6時間はかかると思ったが)8年ぶりの燧ケ岳山頂だ。
 早速尾瀬沼を見下ろす。あの時は尾瀬沼を眼下にビールをグイ!と飲み干したM、同じポーズでもう一度カメラに収めたいが、今日の人混みでは無理、諦めるとしよう。
俎嵓から尾瀬沼を見下ろす
 残るは目の前に聳え立つ最高峰の柴安嵓(シバヤスグラ)だが「たった10m違い。もう登っちょるから儂は行かん」と素っ気ないM。早くも弁当休息モードで動きそうにない(膝痛か?)仕方なく一人で柴安嵓ピークを往復する(ザックのデポを忘れ担いだまま)岩場でもたつきノロノロ行く私をながめながらの弁当の味、さぞ美味しかったことだろう。

 下山は8年前に登った長英新道を下る。ホームページのタイトルで≪長英新道はああシンド≫と表現したが泥んこ田植え状態の酷い道だった。
 柴安嵓から見晴新道を下りたかったが現在は崩壊のため通行禁止だ。また元湯への温泉小屋道も潰れているようだし、ナデッ窪コースは下るには急坂すぎる。尾瀬ヶ原から望む優美な山容からは想像できない山頂への厳しい道のりだ。
俎嵓の岩場を下る 左奥は柴安嵓
 長い長い下りにいい加減飽き2人とも無言、歩きも惰性で・・・と突然足元から落下! 気づけば悲鳴と共に掴んだ特大の蕗(マルバダケブキ)にぶら下がっている。草つきの急斜面は足がかりが無く伸びきった体を持ち上げることが出来ない。この蕗では危ない! とっさに束を掴みなんとか這い上がる。
 Mの「どうしたんか!?」の呆れ顔に返す言葉もない。どうしたのか自分でも分からないのだ。幸い手も足も動く。不注意によるこうした滑落、他人事のように思っていたのにまさか自分が・・・。とにかく情けない。
マルバダケブキの蜜を吸うアサギマダラ
 落ち込んでさらに無言で下っていると、単独行の男性と歩調が合い言葉を交わす。お互い無言に飽いたのか(?)男性とMは山の話や釣りの話で盛り上がっている。おかげで退屈な樹林の中の悪路(8年前に比べれば整備されている)も気が紛れ助かる。
 明日は天気が崩れそうなので尾瀬沼分岐で男性と別れ沼の畔の景色を楽しむ。
     
咲き終わった水芭蕉の葉がいっぱいの道
     
ニッコウキスゲ咲く大江湿原 右奥の樹林の中に長蔵小屋がのぞく
 今日は長蔵小屋に泊まるので時間はたっぷり、ゆっくり楽しもうと思ったらドンドン進むM、小屋での冷たいビールがチラチラ思い浮かんでいるに違いない。
大江湿原からの燧ケ岳
  泥んこの靴を洗い歴史ある長蔵小屋に入る。2段ベットのある相部屋は2組の夫婦には十分の広さがあり早速荷物の整理を開始する。相方の姫路からのご夫婦は百名山踏破中で明日は燧ケ岳アタックとか話が弾む。しばらくして3組目の横浜からのご夫婦が来られ慌てて荷物を引き寄せる。先到着の我々に比べ見るからに軽装のご夫婦だが、我が家と同じコースを歩かれたらしい。予定では沼山峠からバスで御池まで帰る日帰り周回だったらしいが時間切れ、最終バスに間に合わずやむなく泊まることになったとか。

 同世代3組の夫婦でも我が家が一番年長と思っていたが、なんと横浜のご夫婦はお2人とも後期高齢者!凄い! 一日で燧ケ岳を越え周回下山というファイトに脱帽する。時間的には我が家も可能かもしれない。しかしそのファイトがあるだろうか?(歩けても後が怖い)いつの間にか無理はしない、ゆっくりと山を楽しむモードに落ち着いている。2人とも体の故障や怪我を経験したので登れるだけで幸せとつくづく思う。

 明日の予報は雨。休息日にしてゆっくり尾瀬ヶ原まで行こう。
( 文:斉藤(滋)  写真:斉藤(宗) 斉藤(滋) )
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