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北鎌尾根~槍ヶ岳(前編) |
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日 時 |
2015年9月18日~21日 |
山 域 |
槍ヶ岳(長野県・岐阜県) |
天 候 |
9月18日(曇り)、19日~21日(晴れ) |
メンバー |
加藤CL、石井SL、浅原 |
ルート |
アカンダナ駐車場~上高地~ババ平(テント泊)~水俣乗越~天上沢下降
~P2取りつき(テント泊) |
行 程 |
18、19日:
宇部市~山口南IC~山陽自動車道~中国自動車道~名神高速道路~東海北陸自動車道
~高山IC~アカンダナ駐車場(5:30)~バス(6:30)~上高地(7:20)~明神館(8:30)
~徳沢ロッジ(9:30)~横尾山荘(11:00)~槍見河原(12:00)~槍沢ロッジ(13:20)
~ババ平・テント泊(14:30)
20日:
起床・朝食(3:30)~ババ平発(5:00)~槍沢大曲り(5:45)~水俣乗越(7:40)
~間の沢(9:50)~北鎌沢出会い(10:00)~P2取付き渡渉点・給水(14:40)
~P2取付き点・テント泊(16:00)
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加藤が北鎌尾根山行を予定していると聞き、同行を願い出てから山行開始直前まで、岩稜帯での登攀・歩荷トレーニングを繰り返し、山行開始日を迎えた。
天気予報では多少の雲は出るものの大崩れはないとの予報。
初のアルプス・バリエーションルート登山に期待半分不安半分の出発となった。 |
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目的地のアカンダナ駐車場に向けて、3人で代わり代わりに運転する。時間に余裕もあり、連休前とは思えないほど道は空いており、渋滞にもほとんど遭わずに快適に車を走らす。
アカンダナ駐車場にはやはり車が多数停まっているものの、上高地行のバスは連休中で増便もありすぐに乗ることができた。
上高地からは梓川沿いに進む。槍見河原まではほぼ平坦な道で一定距離ごとに山荘もあり、ほてった体を名物のソフトクリームで冷やし、荷物の重さも忘れ快適に歩を進める。
出発前からの緊張感からも一時的に開放された。 |
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梓川に沿って歩く |
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槍見河原では一瞬槍の穂先が見えるも、すぐに雲で隠れ、明日以降にお預けとなる。
槍見河原を過ぎた辺りからは上り道になり加藤が遅れ気味になる。1年前までとは比べ物にならないほど体力が落ちたと嘆きながらも、焦らず残りの体力と相談しながら歩を進める姿にこれまで幾多の難路を踏破してきた老練さを感じた。
槍沢ロッジで本日の幕営地となるババ平の利用手続きを取る。山荘利用者も多数おり多少時間が掛かる。
明日以降厳しい行程が待っているため、景気づけにビールも入手し、ババ平まで残りの登りを歩き切る。
ババ平には既に多数の登山者たちが色とりどりのテントを張っており、水場付近の整備された場所はほぼ埋め尽くされていた。少しでも快適に眠りにつけるよう入念に地ならしをしてテントを張る。
今回の山行は加藤が食事担当を兼務し、初日から腕によりをかけた料理が並ぶ。ババ平は沢から水を引いているため水に困ることはなく、快適なテント泊となった。 |
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20日未明、テントの外からは既に登山者たちの話し声がする。
外に出るとテントをたたむパーティや歩き始めているパーティもいた。空はよく澄んでおり無数の星々を目視することができた。
この日も天気の心配は無用のようである。先行する登山者達を横目にマイペースに朝食を済ませ、荷物をまとめる。
ババ平から少し歩くと河原沿いにも多数のテントが張られていた。石井によると河原沿いは水場から離れるがよく整備されていたとのこと。
槍沢大曲り付近には少しだが雪渓も残っていた。ここを曲がると東鎌尾根に向かってひたすら登る。
自分達の後から数パーティが同じようにここを登り北鎌尾根に向かっていった。辺りは紅葉し出し秋の訪れを感じさせる。時折後ろを振り返ると陽の光で南岳の斜面が赤く染まる。秋とはいえこの日も気温が高くなりそうだ。 |
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紅葉の中を歩く |
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水俣乗越に着くと天上沢へと続く斜面が現れ、此処から先が危険を伴うルートであることを警告する標識が木から吊り下げられていた。
その手前で一本立てていると、同じように北鎌尾根に向かうパーティからお互いの安全と健闘を祈って意気揚々と急斜面を下っていく。まるで別世界に向かう道のようにも感じられてきた。
視線を上げると雲をまとった蓮華岳の美しい三角錐のピークがそびえ立ち、しばらくその形の整った山容に目を奪われる。改めて自分が今、北アルプスにいることに気付かされた。 |
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雲をまとった蓮華岳 |
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水俣乗越の分岐を下るとこれからしばらくは一般登山道と離れ、いつもとは比べられないほどの緊張感をもっての山行となる。気持ちを切り替えて再び歩き始める。
下り始めるとすぐに道が荒れだす。急斜面に加えて、ガレ場になり、落石に気をつけ前後の間隔を十分にとって慎重に下り始める。
少し進んだところで先頭を行く加藤が右のブッシュ帯に入る。そちらのほうが幾分落石も防ぐことができ歩きやすい。踏み跡からして他の登山者たちも同様のルートをたどっているようである。 |
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急斜面を慎重に下る |
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急斜面をほぼ下りきったところでふと横を向くと、初めてはっきりと槍ヶ岳山頂が姿を現す。
天に向かって突き上げる槍の穂先は紛れも無く槍ヶ岳のそれであり、またその横にはこれから歩く北鎌尾根が連なる。
鋸の歯のように尖った稜線を見て、自分はあそこをどのように歩き、そして槍の穂先に立てるのか、無意味だと分かっていても色々と想像してしまう。
加藤らに独標にはいつごろたどり着くのだろうかと聞くと、時間に囚われて焦ってしまうから、慎重に歩くようにと諭され、一回大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。 |
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そびえ立つ北鎌尾根と槍ヶ岳 |
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沢沿いの道は巨岩の上を浮き石に気をつけながら歩く。
所々ケルンが積まれていたり、赤テープが多数貼られていたりする等、まるで一般登山道のようであった。北鎌沢出会い辺りは焚き火やテントが張られていたと思われる整地された地面など、野営の後が残っていた。
貧乏沢との出会手前で単独行の女性と出会う。その方も自分達がこれから目指す北鎌尾根末端から取り付く予定であったが、此処から先水量が極端に増え、断念して北鎌沢から取り付くことにしたとのこと。
さらにしばらく進んだ岩屋付近で出会った十人近くのパーティも同様に北鎌沢にルート変更を余儀なくされたとのことで、この先の道のりが容易では無いことは想像に難くなかった。
案の定、貧乏沢出会いから水量が増え、また沢の幅も広がり、例え沢登りの装備を整えていたとしても、渡渉も困難だったと思われる。幸い高巻きはひどい藪漕ぎではあったが可能であったためひたすら右岸を進む。
北鎌尾根末端の取り付き目前が最も荒れており、巻道もザレ場で落石の危険性が高く、石井が先行して偵察に行った後、一人ずつ慎重に登る。
下りも急な岩場であったが、頼りないトラロープが取り付けられていて難なく抜けることができた。しかし、最後は取り付き地点まで渡渉を余儀なくされる。
渡渉前に自前に用意したありったけの容器に水を汲み、靴を脱いで渡渉する。水位はヒザ辺りでそれまでよりも水深は浅いものの、もし足を滑らせると滝壺まで真っ逆さまである。
最後の最後にこの日最大の核心が待ち構えていた。
靴を脱いで重い荷物を背負うと陸地でも急に足取りが不安定になり、無事に渡渉できるか不安なまま渡渉開始する。すぐによろけ始めるが足を滑らせる訳にはいかないため、必死に踏ん張って体勢を戻す。
対岸まであと少しの辺りからは水の冷たさに再びよろけ始め、最後は倒れこむように対岸にたどり着く。しばらくは足が麻痺してその場に座り込んでいた。
最後尾の加藤も無事に渡り終え、全員無事に最大の核心を抜ける。
ふと視線を上げると岩場には、かつてそこに橋がかかっていたことを示すワイヤーの残骸が残っていた。 |
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P2取り付き渡渉点 |
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渡渉地点に残されたワイヤーの残骸 |
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沢下りの高巻きに時間を要し、また此処から先しばらく水場がなく急登を前に荷物を軽くするためにも、この日は渡渉地点を少し登ったところで野営することとした。
沢の音にすべての音がかき消され、前日と打って変わって静かな夜となる。体は疲れきっているにも関わらずいよいよ明日から北鎌尾根を歩くのかと思うと心臓の高鳴りが続き、目をつむってもなかなか寝付けない長い夜であった。 |
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P2取り付き地点にてテント泊 |
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トラック図 「上高地~天上沢」 |
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( 文/写真/トラック図:浅原 ) |
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