HIKING RECORD 山行記録

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山行記録

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真夏の安蔵寺山

日付2024/08/13
天候晴れ時々曇り 
メンバー斉藤(宗)  斉藤(滋)  N(会員外) 
行程宇部自宅(5:45)~中国道(六日市インター)~七日市~安蔵寺トンネル登山口(8:30-8:45)~安蔵寺山山頂(11:15-11:35)~中央峰(11:55-12:30)~安蔵寺トンネル登山口(13:50)~帰途

今年の夏は殊の外暑い!!! 夏山シーズン到来なのに元気が湧いてこない。Мは熊出没の恐怖、私は自治会の班長当番(様々な行事参加などで家が空けられない)とお互い登らない言い訳をしながら猛暑と戦う日々だ。毎日毎日その日暮らしで精いっぱい、山に登る気力なんて全くないのが現実だ。大海山の常連さんから「どこの山に?」と訊かれても答えは一つ「留守番します」 早々と夏山を諦めてしまう。梅雨明けから続く酷暑、夜はエアコンの無い自室からМの部屋へと避難、自宅とは言え慣れない環境で眠りも浅い。疲れだけがどんどん溜まってしまう。無理をする事もないが、こんな日々ではいけない・・・。

 

N(娘)が帰省し、猛暑の自宅から退避することにする。これを機にどこか山に登りたいが・・・登れる山があるだろうか? ふと安蔵寺山が思い浮かぶ。ブナの森なら少しは涼しいかも・・・キレンゲショウマが咲き残っているかも・・・と期待する。安蔵寺トンネル登山口からなら何とか登れそうな気もする。決定! 真夏の安蔵寺山へ挑戦だ。 数年前、比婆山で左右とも靴底が剥がれてしまい「山登りはもうしない」と宣言したNなので、当然待機と思ったが「運動不足解消のため登る」と言う。確かに体全体丸くなったが、それだけでは無いだろう。歳と共に動きも受け答えも鈍くて覚束ない二親を心配しての事だろう。

出発の朝、ドタバタ支度をし車に乗り込む。予定より遅れてしまったが、こんな早朝に自宅を出るのも久しぶり。大海山以外の遠出登山で気合も入る。以前は車に乗り込むと早々寝込んでいたNが気づけばしっかりと目を開けている。どうやら親の運転(特に私)を信じていないようだ。六日市インターで中国道を下り国道187号から山道へ、登山口が薮で覆われた滑峠を過ぎカーブ連続の道を慎重に進み安蔵寺トンネル登山口に無事到着、ホッとする。他に車はいない。熊に警戒しながら登るとしよう。

安蔵寺トンネル登山口

大汗をかきながら奥谷コースからの縦走路に登り着く。しばらく進むとドーンと立っていた《ナラ太郎》の姿が無い! 若い頃は何度かここを通り過ぎ、その度に見上げてはパワーを貰っていたのに今は無残にも倒れ落ちその身を風雨に晒している。あの頃堂々とそそり立ち緑いっぱいだった姿が思い浮かぶ。この歳になると我が身の行く末と重なり合い寂しくなってしまう。だが《スローでもいい、私はまだ歩けている》そう思い直し、緩やかな斜面をノロノロと登り始める。

残っているナラ太郎の標識

標高1000m以上とはいえ、やはり暑い。歩き始めて1時間以上経つのにまだまだ先は長い。健脚な人なら(というより普通の人)は1時間で山頂に着くというのに昼までに着けるだろうか?

ブナ林を行く

そんな心配をしながらも少し寄り道をすることに。あまり期待できないが《キレンゲショウマ》に出会えるかもしれない。四国剣山に初めて挑戦する前に読んだ宮尾登美子著《天涯の花》。季節が違い小説の舞台剣山では見る事は無かった。初めて出会えたのはウラオレ谷で沢登りの途中、見上げた岩場の上にひっそりと咲いていた。《天涯の花》の主人公珠子の姿と重なって、この花を好きになった。しかし見るチャンスは中々ない。ちなみに剣山山頂近くの劒山本宮劔神社の神主さんによると珠子のモデルはご自身で宮尾登美子の取材を受けたとの事だった。

キレンゲショウマの群落

ワクワクしながら辿り着いた自生地だが、開花の盛りを過ぎたのか、それとも酷暑のせいか《キレンゲショウマ》は元気が無い。無理もない。あたりに水っ気なんて全くない。それでも健気に咲いているのが愛おしい。「咲いてくれててありがとう! 頑張って会いに来たよ」

凛として咲くキレンゲショウマ (2015年8月22日撮影)

目的の半分は達した気がするが、ここで引き返せば心残りだろう。余力を振り絞って山頂を目指す。前を行く2人が立ち止まり、何やら慌ただしい。マムシが地を這わずに草&笹原の上を泳ぐように過ぎ去ったらしい。蛇、トカゲ、ムカデ・・・大嫌い! バテバテで遅れていて良かった~。

ホトトギス あちこちに咲いている

真夏の安蔵寺山山頂は予想通り人影が無い。薄雲がかかっているようだが陽射しは強い。まだ展望台に行った事が無いNに新しい景色を見せたいがこの暑さ、短距離でも堪えそうでここから引き返す事にする。

誰もいなかった安蔵寺山山頂

ベンチのある中央峰でお昼にする事にし、マムシに気を配りながら引き返していると単独行の男女2人とすれ違う。単独行だけでもびっくりだが、鈴、笛、携行の雰囲気が無いのに驚く。我が家ときたら熊恐怖症のМが前日捜し出したザ・ピーナッツのカセットテープがガンガン、大きな鈴はガラガラ、更に時々笛でピーピー・・・。みなさん、熊が怖くないのだろうか?

中央峰でランチタイム

中央峰の朽ちかけたベンチに腰掛け行動食を摂っていると「あら、斉藤さん、お久しぶり!」と声がかかる。Мの知人? だがМはポカ~ン、私も???。いつもの事だ。もともとお顔もお名前も中々覚えられないが、最近更に物忘れが進んでしまい大海山でも1週間前に出会った方ですら忘れてしまう。にこにこ顔で近づいて来られるお2人はご夫婦か? 焦る様子に気づかれたか「斉藤さん、〇〇です。」と名乗られる。アッそうかお名前を聞いてすぐに分かったが、ショック! Мはまだ気づかない。私は山でご一緒した事は無いが、Мはあんなにいつもお世話になったのに。我が会のリーダー的存在で《西中国山地の沢》の著者でもある故三浦章さんを中心としたグループ(宇部山岳会以外の方も多くМは三浦教室と言っていた)の主要メンバー〇〇さんではないか。今は解散された山岳会《やまびこ》でご夫婦共活躍しておられた。三浦教室のレベルにほど遠く、私は奥三段峡の沢登りにたった1度だけ仲間入りさせて貰ったが、Мは毎週のごとく教室に通い〇〇さんとは沢、岩、雪山と出かけ会社定年後の第二の青春を、共に過ごさせて貰った仲間だ。思いがけない出会いに話は中々途切れないが、お2人はこれから山頂へ向かわれるのだ。程々にしないといけないだろう。聞けば、奥様が骨折をされしばらく山を休まれていたらしい。だが近々ご主人がアルプスへお出かけなので心配で付いて行かれるという。今日はそのための訓練とか、大いに分かる気がする。これからもお互い元気で登り続けていたいと切に願いながら中央峰を後にする。

芦谷杉の下を下る

行きもきついが、帰りはもっときつい。元気な2人に置いて行かれとうとう「速~い。待って~」と音を上げる。気づいた2人に追いついた途端ドカッと座り込んだ目線の先に何やら白い花。この角度からしか目につかなかっただろう。見たことあるような、ないような・・・。疲れているけど写真を撮っておこう。ピンボケにならねばいいが。

ミヤマウズラを見つける
ナラ太郎跡地近くまで下る

トンネルからの楽々コースとは言え、我が家にとって久々の遠出登山、それなりに疲れて愛車まで帰り着く。日常生活に疲れていないのか意外と元気なМとの差を感じ、2人きりで歩いたら空中分解したかもしれない。ささやかな2024年の我が家の夏山《安蔵寺山》懐かしい人とキレンゲショウマに出会えた心和む一日だった。

 

text斉藤(滋)
photo斉藤(宗)  斉藤(滋)