HIKING RECORD 山行記録

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山行記録

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黒部川奥の廊下―赤木沢沢登り―

日付2025/08/30
天候晴れ
メンバー鹿野、藤本
行程8月29日(金)
14:30 山口出発~翌1:30有峰林道 亀谷ゲート
8月30日(土)
7:00折立登山口~11:00 太郎平小屋12:00~14:00薬師沢小屋
8月31日(日)
6:00薬師沢小屋 入渓~黒部川遡行~8:00 赤木沢出合~赤木沢遡行~13:30出渓~14:30 登山道合流~15:30 赤木岳~16:00 北ノ俣岳~18:00 太郎平小屋
9月1日(月)
6:30 太郎平小屋~9:00薬師岳~11:20太郎平小屋12:00~14:40 折立登山口~翌8:30山口着

黒部川源流域の支流、赤木沢で沢登りをしました。

 

1日目:薬師沢小屋まで

山小屋の予約に合わせて登山の日程を組んでいましたが、最終日の天気予報が思わしくありませんでした。幸いにも出発直前に薬師沢小屋のキャンセルが出たため、予定を1日早めて出発することにしました。

深夜1時半、有峰林道の亀谷ゲートに到着すると、すでに数台の車が開門を待って停車していました。私も最後尾に車を止めて仮眠をとりましたが、最終的には10数台の車が列を作っていました。今年の夏は特に暑く、山中でも気温が高く寝苦しい夜でした。

朝6時、ゲートが開くと有峰林道を走り、折立登山口へ向かいました。人気の登山口だけあって、最も登山口に近い駐車場にはわずか数台分の空きしかありませんでした。準備をしていると東京発のバスが到着し、登山者が一気に増えて賑やかになりました。

折立登山口から登山を開始。樹林帯を抜けると、日陰はほとんどなく、標高が高いにもかかわらず強い日差しが照りつけて暑さを感じました。こまめに休憩を取りながら登り続け、ようやく太郎平小屋に到着。

ようやく見えてきた太郎平小屋

 

目の前には雄大な薬師岳がそびえ立ち、その景色を眺めながら名物の「太郎ラーメン」をいただきました。汗をかいた体に、ラーメンの塩分がじんわりと染みわたり、疲れが癒されるようでした。

小屋で得た情報によると、30分ほど前に薬師平で熊の目撃があったとのこと。約10日前には、薬師峠のキャンプ場で熊による被害が発生し、テントや食料が持ち去られたため、キャンプ場は閉鎖されていました。その代替措置として、太郎平小屋前の広場に8月末までテント設営が許可されており、数張のテントが設営されていました。

熊対策として、それぞれ熊スプレーを携帯していましたが、できることなら熊とは遭遇せずに済ませたいものです。

太郎平小屋で一休みした後、薬師沢小屋を目指して出発。約2時間の道のりを歩き、無事に薬師沢小屋に到着しました。

薬師沢小屋に到着

 

翌日の行動に備えて、黒部川周辺を少し探索。澄んだ川底にはイワナが泳いでいるのが見え、自然の豊かさを感じました。一日の行動で汗をかいたので、川の水で手ぬぐいを濡らして体を拭き、しばらく川岸で涼みながら休憩。

薬師沢小屋に戻ってからは、冷えたビールで乾杯。明日に向けて英気を養いながら、静かな山小屋の夜を楽しみました。

 

2日目:赤木沢遡行

翌朝6時、薬師沢小屋を出発。小屋前のテラスに架かっている梯子を下りて黒部川に入渓。川の水は冷たく、できるだけ浸からないように岸をへつりながら慎重に遡行を開始しました。途中には滝もあり、巻き道を使って越えます。どうしても避けられない場所では水に入るしかなく、最も深いところでは腰まで浸かるほどの水深がありました。

薬師沢小屋前のテラスから梯子を下りて黒部川に入渓

 

黒部川のへつり

 

巻き道から滝を見下ろす

 

出発から約2時間後、赤木沢の出合に到着。いよいよ赤木沢の本格的な遡行が始まります。しばらく進むと、写真やブログで見た憧れの風景が目の前に広がり、思わず足を止めて見入ってしまいました。青空の下、壮大な滝が美しく映え、まるで絵画のような光景です。

正面の滝の手前が赤木沢の出合い

 

赤木沢の出合い

 

 

 

赤木沢の遡行1
赤木沢の遡行2
赤木沢の遡行3
赤木沢の遡行4
赤木沢の遡行5

いくつもの滝をフリーで登りながら進み、ついに高さ30メートルの大滝にたどり着きました。勢いよく流れ落ちる水が大迫力でした。

大滝

巻き道を使えばロープなしでも滝を巻くことができますが、鹿野の希望で左岸を高巻きすることにしました。鹿野がリードし、ブッシュを掻き分けながら進みました。1ピッチ目の終了は中間の岩棚で取り、2ピッチ目では最上部の樹木を支点にして登攀し、巻き道に合流。滝の上部をトラバースする際には、滝の落ち口がよく見えました。

滝の落ち口の近くをトラバース

大滝を越えるといよいよ沢登りの終盤。2番目に出てきた右俣に入り、沢の幅が次第に狭くなりました。ケルンが見えてくると沢の終点。そこから赤木岳の2622ピークと2621ピークの間のコルを目指して登りました。山の斜面一面に花畑が広がり、まるで天国のような光景が広がっていました。

赤木岳のコルを目指して1
赤木岳のコルを目指して2

稜線に出ると、昨日の登山口出発以来途絶えていた携帯の電波がようやく入り、家族に無事を知らせることができました。

赤木岳のピークがどちらかは判然としませんでしたが、まずは2621ピークに登頂。途中、黒部五郎岳方向から来たハイカー数人とすれ違いました。次に2622ピークへと向かい、

今夜の宿泊地である太郎平小屋へ向かいました。

そこからも道のりは長く、北の俣岳を通過。次に見えた山を太郎山だと思って登ったものの、実際の太郎山はまだ遥か先でした。ひたすら歩き続け、ようやく18時ごろに太郎平小屋に到着しました。まずは宿泊手続きを済ませ、待ちに待った「お疲れ様」の生ビールで乾杯。体に染み渡る一杯でした。すぐに夕食の時間となりましたが、通常の夕食時間は過ぎていたため、食堂で食事をしている登山客は私たち2人だけでした。

長い縦走路の先に見える太郎平小屋
お疲れ様の生ビール

最終日:薬師岳に登り下山

翌朝6時半、余計な荷物は太郎平小屋に預け、身軽な装備で薬師岳を目指して出発しました。熊の被害により閉鎖され、誰もいない薬師峠キャンプ場(太郎平キャンプ場)を通過。初日に熊が目撃された薬師平を抜け、薬師岳小屋に到着しました。

閑散とした薬師峠キャンプ場(太郎平キャンプ場)

前日の疲れが残っていたものの、歩くペースを一定に保つことで順調に登ることができました。小屋の前のベンチでしばし休憩した後、いよいよ山頂への最後の登りへ。ザレ場の急斜面を慎重に登り、屋根が無くなり石積みの壁だけ残った避難小屋の跡を過ぎると、緩やかなトラバースを経て薬師岳山頂に到着しました。

平日にもかかわらず山頂には数人の登山者がいて、静かながらも賑わいを感じました。山頂からは槍ヶ岳や剱岳などの名峰がくっきりと見え、素晴らしい展望が広がっていました。

薬師岳山頂にて

11時半ごろ太郎平小屋に戻り、下山を開始。日差しが強く、汗ばむほどの暑さの中、13時半ごろ三角点のベンチに到着。ここから先は樹林帯に入り、薬師岳ともお別れです。

長く続く樹林帯の道を歩き続け、14時半に折口登山口に到着。最後は温泉で汗を流し、仮眠を取りながら帰路につきました。

text藤本
photo藤本、鹿野