HIKING RECORD 山行記録

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飯豊連峰縦走 前編 (飯豊山)

日付2025/07/28
天候快 晴
メンバー斉藤(宗)  斉藤(滋)  会員外 田中(山口山岳会)
行程7月26日
宇部自宅(5:00)~ 中国道・舞鶴若狭道・北陸道 ~ 越中境PA (17:25) 泊
7月27日
越中境PA(06:15) ~ 北陸道・磐越道(西会津IC) ~ 西会津町(買い物・入浴他) ~ 弥平四郎登山口 祓川駐車場(15:15) 泊
7月28日
弥平四郎登山口祓川駐車場(4:40) ~ 上ノ越(7:00-7:15) ~ 疣岩山分岐(10:05) ~ 三国小屋(11:55-12:55)~ 切合小屋(16:20)泊
7月29日
切合小屋(5:45)~ 本山小屋(9:30-9:50)~ 飯豊山山頂(10:15-10:50)~ 駒形山 ~ 御西岳 ~ 水場分岐(13:50-14:15) ~ 御西小屋(14:20) 泊

長い間夏山から遠ざかっていた我が家だが今年は何処かへ出かけたい。だが「川」と言えば「山」、「山」と言えば「川」と返す2人、いつまで経っても目標の山が決まらない。今年もダメか・・・と諦めかけた頃、田中さん(大海山の常連仲間)が飯豊山を目指して情報収集中と知る。そう言えば以前聞いていた今は亡きご主人への思い、お2人で登りたかった3つの山《幌尻岳・トムラウシ山・飯豊山》のうち前2座は登れたものの飯豊山だけが残っていた。飯豊連峰のごく一部だが我が家は2度訪れている。田中さんなら体力的に問題ないよと伝えつつ、確かに登山口へのアプローチは大変だなぁと思う。いつも我が家の山行に快く付き合ってくれる彼女だ。「一緒に行きましょう!」と声掛けしたいところだが、そうはいかない。6年前に登った時でさえ《飯豊はもういいで!!》と思った程疲れてしまったのだ。Мだって忘れていない筈だ・・・がいつの間にか飯豊も悪くないなぁ、田中さんが一緒ならもう一度登れるかもしれないなぁと思い始める。思えば前2回は天候が思わしくなく最高峰の大日岳は霧の中、僅か数分で引き返してしまったのだ。更に決め手となった事、なんと知人の高橋さん(元登山ガイド、飯豊山の山小屋管理人、吾妻小屋の管理人)が今夏、三国小屋の管理人として既に小屋におられるのだ。偶々電話して分かった事だが、「もう、会えないと思ってたが、また会えるとは嬉しい。来る前に知らせてよ、待ってるから」の嬉しい一言。よ~し、これで決まった! ちょっぴり不安はあるが、もう一度飯豊山に挑戦だ! 田中さん喜んでくれるかな?

 

 

7月26日
現地まで公共の交通機関でと言っていた田中さんだが《出発から帰着までoneチーム》を了承してもらい愛車デリカで出発する。Мと交代で運転し日没前に無理をせず、北陸道の越中境PAにて 泊

 

7月27日
予定より早く西会津町に到着。下山後宿泊予定のロータスインで入浴し、食料の買い出し等済ませる。登山口の弥平四郎集落までカーナビがあっても分かりにくい経路だが、前回は親切な役場から頂いた写真付きの案内表で何とか辿り着けた。今回も案内表を頼りに走り始めたが間もなく??? とりあえず地元の行事で集まっておられる皆さんに「弥平四郎に行くには?」と問いかける。すると「後ろに付いておいで」とすぐさま1人のおじさんが傍の軽トラに飛び乗り即発進! まさか? テレビ番組《ポツンと一軒家》で捜索隊を案内する親切な地元の人そのままだ。かなり走って「ここから道なりに行けば1時間位で行けるよ」と笑顔で言われる。会津なら山口(長州)ナンバーは心中穏やかではないかも・・・がまるで反対、思いもよらないご厚意に感謝の言葉以外何もお返しできない。おかげで前回よりスムーズに無事祓川駐車場に到着する。

 

7月28日
西会津町への事前の問い合わせで今年は大雪で林道、登山道が崩壊したと聞いていた。林道は直前に修復されたが、前回歩いた新長坂ルート(松平峠経由、水場あり)は一部消滅、危険なため、新ルート(上ノ越、巻岩山経由、水場なし)を行かざるを得ない。6年のギャップ&所要時間+1時間&水場なしが大きく圧し掛かって来る。解決策は早発ちしかないと夜明けと共に歩き出す。今年は列島クマ騒動だが気をつけて行くしかない。今回も荷は10Kgを超えてしまった。稜線までの急坂を頑張れば何とかなりそうだ。

上ノ越への急坂を登る

ようやく上ノ越まで登りホッとする。だが稜線に出ても楽にはならない。時間と共に暑さが増しペースがドンドン落ちていく。疣岩山を越えこんなにきつかったかな・・・と登っていると7~8人のパーティーとすれ違う。「気をつけて!子熊が近くにいたんで」との情報、なら親熊もいるかも!すぐさまМが笛を吹き始める。 ピーピーと鳴らし続けるМ、私は息をするだけでも精いっぱいだ。

こんなところにアサギマダラ
ヨツバヒヨドリ

「御西小屋が見える!」Мの言葉に顔を上げると目的地、大日岳への稜線が青空の下くっきりと連なっている。初めて目にする田中さん大喜びだが、実は私も初めて(前回はこの辺りで雷の洗礼を受けそれどころではなかった)明後日にはあの稜線を歩く筈、頑張らなくては。それにしても三国小屋はこんなにも遠かったかな? 太陽が容赦なく照り付ける。とにかく暑い!!

大日岳(左)へと続く稜線

やっと三国小屋に辿り着き高橋さんの顔を見るなり挨拶もソコソコに座り込む。「1時迄に着かなかったらここに泊まれと言うつもりだった」とニコニコ顔でペットボトルを目の前に。今年は大雪だったのに水不足だそうだ。水場には苦労しておられるらしい。小屋の外の温度は29度、出たくない。居心地が良くて、ついついダラダラ過ごしてしまう。「切合小屋に少し遅くなるかもと電話しとくから」と高橋さんに促され、ようやく立ち上がる。疲れ切っているのがバレバレだ。

高橋さんに見送られ三国小屋を出発

超スローペースも我慢の限界に達したのかМが苛立ってきたのがわかる。苦しかった4年前の四国剣山~三嶺~天狗塚縦走時と立場がま反対だ。腰の激痛に耐えたМの辛さを今、改めて思う。あの時の私の焦り・・・Мが今感じているのだろう。少しでも速く歩きたいが思うように足が出ない。文句も言わず付き合ってくれてる田中さん、有難う。

梯子を慎重に登る
狭い尾根を通過
岩場をトラバース

行く手に切合せ小屋がやっと現れる。チラッと振り返ったМ「後、30分の頑張り!」と声掛けし、スタスタと視界から消えてしまう。小屋が見えてからが意外と長かったがなぁ・・・と思いながら歩いていると空荷で引き返して来たМがザックを渡せと言う。小屋はもう近い。大丈夫と断わると「担いでもらったらいいんじゃないですか」と田中さん。うーん、Мには抵抗したが大迷惑をかけている田中さんの一言には逆らえない。仕方なくザックを下す(初めての経験) 出発して11時間40分目的地切合小屋にようやくゴール、ホッとする。小屋の佐藤、長谷川両管理人さんとは6年ぶり(覚えていらっしゃらないだろうが)挨拶方々おしゃべりする(口だけは疲れない?) 楽しみにしていた雪でキンキンに冷えた缶ビール(1000円)のなんと美味しい事か! 一気に喉に流し込む。 よ~し、明日は頑張るぞ!

 

7月29日
飯豊本山登頂の朝を迎える。ここまでが長い道のりだった田中さん、どんな心境だろう? 時間的には今日は楽(の筈)だが昨日の私の不調が気がかりなのか、Мの叱咤(激励は無し)が厳しい。この時間から既に暑くゆっくり歩かせて欲しいのに(ゆっくり過ぎるので)叱咤は続く。

御秘所を望む

御秘所を楽しそうに登って行く田中さんをモタモタと追っかけながら前回は結構楽しかったのにと思う。

御秘所を登る
ミヤマウスユキソウ
長~い登り

暑さと戦いながら本山小屋に到着、一休憩し、いよいよ飯豊山山頂へと歩き出す。わずかに残雪を纏った雄大な景色が目の前に広がって来る。穏やかなのにどっしりと威厳に満ちた飯豊連峰を目の当たりにし、きつかった分言葉にならない思いが湧いてくる。 《飯豊山頂 標高2105・1М》 着いた! やったね! 思わず3人でハイタッチ! 早速記念写真を撮る。「実は今回主人と一緒に登りました」と田中さんがご主人の写真を取り出され改めてもう一度パチリ。「良かったね」と思わず声掛けしたら「有難うございました」と涙声が返って来る。いやいや、こちらこそ有難う。田中さんがいてくれたからこそ登れて、私も霧の無いこの景色、今初めて目にしているよ。

飯豊山山頂

何処からかヘリの音が聞こえる。湧いてきた霧の中に大きなヘリが2機飛んでいる。難関の大嵓尾根あるいは石転び沢辺りでの遭難? 救助訓練? しばらく見守る。 ヘリが飛び去った所で、さぁ、そろそろ腰を上げて御西小屋を目指すとしよう。

霧の中を飛ぶヘリ

前回は御西小屋まで半日で行けたが今日は時間がかかりそうだ。小屋へと向かう登山道が遥か遠くへと続いている。

駒形山へ登る
遥か遠くに続く道
ミヤマリンドウ

前回満開だった草月平のニッコウキスゲ、アオノツガザクラ等枯れてしまったようだ。替わりにマツムシソウ、ヨツバシオガマ、コバイケイソウ等が迎えてくれる。ペースは相変わらずスロー、ようやく御西小屋手前の水場への分岐までやって来る。そう言えば我が家山行では水汲みは殆ど私だった。でも今日は「ここで待っちょけ」の言葉に素直に従う。田中さんに申し訳ないが正直余力が無い。空になったありったけのペットボトルをサブザックに押し込み水場に下って行く2人を見送る。本当に情けない。待つ事しばし、帰って来るなり「ホラっ」とМから渡されたペットボトル、冷たい! 雪解けの水、思わずゴクゴクと飲んでしまう。2人に申し訳ないと思いつつ。

水場に向かう2人を見送る

無事、御西小屋に辿り着く。小屋の管理人、草刈さんは小屋の外に設置した双眼鏡を覗くように言われる。「三国小屋が見えますよ」 飯豊の管理人さんは小まめに連絡を取り合っておられるのだろうか? ザックを下し、一番は今日もビール。雪渓の雪で冷やされたビールは格別(小屋で飲んだ空き缶類はすべて登山者が持ち帰り) 憩いのひと時だ。ツアー1組が同宿となるが今回も混みあうことなく快適に過ごせる。明日は最高峰の大日岳挑戦、頑張らなくては。

御西小屋で寛ぐ

夜中に外のトイレへ。見上げれば満天の星(老眼&乱視でも)しばし見とれる。

飯豊連峰 ② (大日岳)

text斉藤(滋)
photo斉藤(宗) 斉藤(滋)