HIKING RECORD 山行記録

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八ヶ岳縦走記録(前編)

日付2023/10/10
天候10日 曇り後雨  11日 晴れ 
メンバー斉藤(宗)  斉藤(滋)
行程10月9日
自宅(6:45)~中国道・名神・中央道~諏訪湖SA(18:10)車中泊
10月10日
諏訪湖SA(7:15)~諏訪南IC~渋御殿湯登山口(8:50-9:20)~冷山引き返し地点(10:55)~渋御殿湯(12:05-12:30)~黒百合ヒュッテ(16:10)
10月11日
黒百合ヒュッテ(6:10)~東天狗岳(8:10-8:20)~根石岳~箕冠山(9:45-9:50)~夏沢峠(10:25-10:55)~硫黄岳(12:55ー13:05)~硫黄岳山荘(14:05)泊

今夏の猛暑はさすがに堪えた。Mの白内障手術もあって夏山は諦めたが、秋になっても2人共中々腰が上がらない。誕生月の10月は目の前だ。今年はМ81才、私79才2人合わせて160才の記念の年だ。5年前の150才では北八ヶ岳、蓼科山、霧ヶ峰、氷ノ山、大山と歩けたが今はそんな元気は無い。だがこのまま萎んでしまうのも寂しい。一昨年の四国山行での腰痛のトラウマから、中々抜け出せないМだが「赤岳鉱泉のステーキをもう一度食べようよ」の誘いに、ようやく重い腰を上げてくれる。前回登った北八ヶ岳最高峰の天狗岳から、南八ヶ岳の最高峰赤岳までをゆっくりのペースで歩いてみたい。

 

 

 

10月10日

渋御殿湯駐車場に到着、4日分の駐車料金を払い出発の準備をする。忙しそうな宿の女将さんに訊いた登山口への道を歩き始める。今日の道のりは2時間30分~3時間、4時間かかっても13時過ぎには着くだろう。登山口の標識は無いが目の前の道をまっすぐ行くと赤テープが次々現れる。かなりの急坂だが時間はたっぷり、焦る事はない。頑張る事1時間、ようやく急登から解放され緩やかな林となる(自宅でチラッと見ていた地図通り最初は急坂、後平坦)それにしても予想外の静寂さだ。

 

苔むす原生林

 

5年前の苔むしたニュウの原生林を思い出し曇り空だがカメラを取り出す。その時目についた足元の《→狭霧苑》 何だろう?標識? 覚えのない地名(?)に戸惑い慌てて地図を取り出す。嘘!!! ま反対に歩いている! 時間は既に11時、しまった!一瞬、絶望感に襲われる。どうしよう?! いや、迷ってる場合じゃない。即回れ右、今来た道を一目散に走りだす(気持ちだけ)「焦ると怪我するぞ!」Мの声を背に覚束ない足取りでドンドン下って行く(気持ちだけ)揃いも揃ってなんと馬鹿な事を!2人で1人前にもなってない。本当に情けない!自分自身への怒りがこみあげるが、どうしようもない。

 

 

 

渋御殿湯まで帰り着く。よくよく見れば橋を渡ってそれらしき登山口があるではないか。2人して何を見てたんだ!お粗末なミスにまたまた、怒りが湧いてくる。1日ずらすべきか? 取り合えず黒百合ヒュッテに電話・・・繋がらない。予定の時間に着かなければ心配されるだろう。行くしかない!雨が降り始めたので急いで雨具を着、慌ただしく行動食を口にねじ込む。本来ならヒュッテ着の時間になっての出発だ。雨が本降りになり3時間ロスの重みが足に伝わり思うように登れない。なぜ一度は思い浮かべたコンパスを出さなかったのか・・・いくら主要なコースでも確かめもしないで行くバカがどこにいるだろう(ここに2人)認知症が進んだんじゃろうでは済まされない、それ以前の問題だ。山を甘く見ていた・・・恥ずかしくて(Мも同じ思いだったらしい)読図だの、コンパスだのって言う資格なんて無い!!! 浅はかな驕りが招いた結末だ。

 

 

 

出かける前、腰痛を心配していたМだが順調に登っているようだ。同じペースでついて行きたいがこちらも始めは急坂、思うように足が出ない。日没前に着けるだろうか?あまりのノロノロに堪り兼ねたМが立ち止まり荷物を取ると言う。そうだ、四国山行(腰痛のМが超不調)で私が味わったどうしようもない苛立ち不安を、今Мが感じているのだろう。だが、この雨の中、荷の受け渡しでモタモタしたくない。大丈夫と告げ、もう一度ヒュッテに電話する。よかった! 今度は繋がった! 約束の3時半には着けないと連絡でき少し気が楽になる。しかし、やっぱり襲って来た例の悪魔が太腿を直撃だ。特効薬の68番を飲んでも激痛は治まらない。おまけにМまで同じ目に遭うとは、もはや漫画としか言いようがない。2人してしゃがみこんでいると思いがけず7人パーティーが上がって来られ(初めて会う登山者)声を掛けられる。痙攣とわかると68番、ポカリ、岩塩と色々気遣ってくださる。雨の中の高齢者2人、気がかりだろうが大丈夫と伝え先行してもらう。

 

 

 

アッ!小屋だ!何度ぬか喜びしただろう。 ヒュッテの屋根に見えたのは赤く色づいた葉の枝だ。同じ事の繰り返し・・・雨は降り続き水没気味の登山道を、歩くというより半ば這うように惰性で足を出す。いつかテレビで見たグレートレースで、疲れ切った女性の倒れては立ち上がる姿が思い浮かぶ。立ち止まったらヤバイ! 何度も自分に言い聞かせるが、足元はノロノロ・・・。と見えた!今度こそ本物、ヒュッテに着いた!ホッとした顔でМが振り返っている。暗くなる前に着けた。全身ずぶ濡れだが助かった!

 

 

 

夕食後、広間で寛いでいるとまたまた痙攣に襲われる。無言でうずくまっていると目ざとく気づいた女性から「おばちゃん。大丈夫?」「どこが痛い?どうして欲しい」と声を掛けられる。途中で出会ったパーティーの男性から岩塩が効くと差し出されたので、有難く舐める。周りが心配してくれているのが分かる。だが「大丈夫です。いつもの事です。そのうち治ります」とМは冷ややかだ。見るからにヨボヨボの婆さん(おばちゃんと呼んで貰ったが)はみんなに優しくされ、その後痙攣は起こらなかったが、悪態をついたМ、夜中にしっかりと神様のお仕置を受け68番を飲む事に。

 

10月11日

昨日の出来事もあり、早々にヒュッテを出発する。

 

朝の黒百合ヒュッテ
天狗岳への登り

 

順調に登り着いた東天狗岳からは西天狗岳に向かう人影が見える。天気は快晴、登りたい気持ちはあるが(5年前は登頂)ここから先、赤岳までは44年ぶりなので余力を残しておきたい(Mは20年ぶり)

 

東天狗岳より西天狗岳を望む
天狗岳を下って

 

根石岳を下り工事中の根石小屋を過ぎ箕冠山までやってくる。石ころだらけの登山道も土に変わり林の中を緩やかに下って行くと夏沢峠に到着だ。シーズンを終え閉鎖中の2軒の山小屋と44年ぶりに再会、懐かしい。ここまで来れば今日は大丈夫、昼食はゆっくり摂り、硫黄岳の登りに備える。

 

44年ぶりの夏沢峠

 

硫黄岳への登りが始まる。焦らずゆっくりと登れるのが嬉しい。

 

夏沢峠から硫黄岳へ

 

登り着いた山頂は広々と360度の大パノラマだ。北八ヶ岳の優しい稜線と対照的な赤岳、阿弥陀岳の迫力ある姿に圧倒され、明日はあそこを歩くんだと少し緊張する。まぁ、何とかなるだろう、Mリーダーよろしく頼みます。

 

硫黄岳山頂
硫黄岳を下る

 

昨日と違い早めに硫黄岳山荘に到着する。個室ではないがカーテンで仕切られたゆとりの空間でのんびりと寛ぐ。昨日の今頃は・・・と2人で振り返りながら、落ち込んだり、ホッとしたり・・・。諦めないで良かった!今日の晩御飯はきっと美味しいだろう。

 

硫黄岳山荘の夕食

 

 

 

 

(   → 八ヶ岳縦走(後編 硫黄岳山荘~横岳~赤岳)    )

text斉藤(滋)
photo写真:斉藤(宗) 斉藤(滋)