HIKING RECORD 山行記録

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新人夏山合宿_剱岳源次郎尾根

日付2023/08/09
天候晴れ
メンバー鹿野、江本(正)、大村(聡)、大村(孝)、田中、藤本
行程8/9、21:00小郡IC~(高速道路)~
8/10(初日)、7:15立山駅着~8:20立山駅発~9:30室堂着~9:50室堂~15:00剱沢キャンプ場着
8/11(二日目)、3:00 剱沢キャンプ場発~4:11雪渓入渓点~4:47取付き点~9:20Ⅰ峰~10:10 Ⅱ峰~13:20剱岳~15:30前剱~17:30剣山荘~18:40剱沢小屋~19:00剱沢キャンプ場着
8/12 (三日目)、5:30 剱沢キャンプ場発~9:40室堂着~10:00室堂発~11:07立山駅着~14:30立山IC~(高速道路)~翌日1:00 湯田温泉スマートIC

経験の浅い会員に夏の北アルプスのバリエーションルートをとおして、体力・技術・気力の向上を目指すことが目的だったため、初心者にも与し易いバリエーションルートである剱岳源次郎尾根を選択した。

 

初日、台風6号と7号のW台風の動きを気にしながら宇部を出発した。トイレ休憩のみで交替運転し長時間をかけて車で現地入りしたが、久々の夏山バリエーションということで、テンションは上がっていて疲れは感じない。ケーブルカーは、予約していた時間よりも1時間早く切符をとることができた。美女平でバスに乗り換え室堂に到着後、先発隊は源次郎尾根取付き点の確認のためすぐに出発する。後発隊も少し遅れて出発する。室堂の標高が2450mということもあり、高所順応を意識する。みくりが池は、火山特有の青緑色をした水面に立山ブルーを反射させ幻想的な趣を見せてくれた。

 

写真1.みくりが池

 

石とコンクリートで整備された遊歩道をゆっくり歩くと、雷鳥の親子が遊んでいた。標高2277mの雷鳥沢キャンプ場へ一気に下った後の、標高2750m剱御前小舎までの登り返しは、重い荷物と暑さで体力を奪われ、まるで牛歩の如し。先発隊と現在地を頻繁に無線で確認しあう。牛や、亀の歩きでも動いていればいつの間にか剱御前小舎に到着しオコジョが出迎えてくれた。すばしっこくて写真が撮れなかったが、意外と小さい動物だった。大休止を取った後、今日の目的地である標高2520mの剱沢キャンプ場へ降りて行く。先発隊も源次郎尾根の取付き近くまで偵察したが雪渓がほとんどないため剱沢キャンプ場で待機しているとのこと。合流後はテント設営、夕食準備と忙しい。山岳警備隊が常駐しているので源次郎尾根に入ることを伝え情報を収集した。取付きまでは雪渓に乗るところがポイントとなる。やはり雪渓はシュルンド(クレバス:雪渓にできた深い割れ目)が大きく開いており出来るだけ夏道を下ったほうが安全であることと、源次郎尾根取付き後の3mぐらいの岩壁ではロープを極力出して通過するよう助言を受けた。滑落事故が頻繁に起きているらしい。この日の夕食は、ビールを我慢する。あっという間に牛とじ丼を流し込み、翌日の行動を再確認後に19時就寝する。

 

写真2.剱沢キャンプ場

 

2日目は2時に起床、朝食をパンに変更したことで時間短縮でき予定していた3時には出発することができた。満天の星空の中、ヘッドランプを点灯させ静かにキャンプ地を後にした。他パーティのテントもほとんど明るくなっており、剱岳の朝は早い。
別山尾根にはもうヘッドランプの明かりが見えた。
剱沢へ下降するパーティは、我々が1番スタートの模様である。剱沢を夏道沿いにしばらく降りて行くと大きく開いた雪渓が現れ、クレバスに吸い込まれそうである。スパイクチェーンを着用して少し休憩し明るくなるのを待った後、念のためコンテニュアスで雪渓の安定したところから入渓し、尾根の取付きに移動する。下方に源次郎尾根の取付きの目印である大岩が見え平蔵谷が姿を現した。雪渓はクラストしていたが、スパイクチェーンや、軽アイゼンを着用したことで歩きやすかった。

 

写真3.早朝のキャンプ場を後にして

 

 

写真4.大きく開いた雪渓

 

写真5.源次郎尾根取付き

 

尾根に取付いてから直ぐに約3mの壁が出てきた。ワンポイント足場が悪いので安全を確保するためロープを出して通過する。しばらく木登りが続きぐんぐん高度を稼いでいくと5m程度の岩場が出てきたため、ここもロープを使用する。技術的には一番難易度が高く感じた。見た目は正面から取付きたくなるが、左か右かを回り込むようにして登攀すると楽に登れるようだ。痩せ尾根、トラバースと失敗を許されないちょっとした場面が随所にでてきて緊張感は続く。場所によっては、ロープをフィックスしたり、スリングでの確保も多用した。源次郎尾根の核心部は、Ⅱ峰の懸垂下降が注目されがちだが、Ⅰ峰手前の尾根に出るまでの斜面の登りであったように感じた。取付きから約4時間半かけて漸くⅠ峰に到着する。痩せ尾根を下りⅡ峰へ登り返し懸垂下降地点に着いた。懸垂下降は地元の陶ヶ岳やセミナーパークのクライミング施設であらかじめトレーニングしておいたので、スムーズに全員が降下することができた。ロープ回収時に途中の突起した岩にロープが引っかかるというハプニングもあり、ヒヤリとしたが、冷静に何度かルピーングを試みて難なく回収することができた。

写真6.約3mの最初の壁:ワンポイント、やや難しい
写真7.約5mの2番目の岩場:技術的にはここが一番難易度が高く感じた
写真8.Ⅱ峰を30m懸垂下降した

 

剱岳本峰への登りは、ガレ場が多くルートハンティングが要求される。単調な長い登りの中にも、高山植物もあり気持ちを和らげてくれる。足元が急にフラットになった。剱沢キャンプ場から約10時間・・・。皆よく頑張ってくれた。積乱雲も発達してきて、ガスもかかってきたので早々に記念撮影し、急いで別山尾根を下って行った。途中、天気は思ったほど崩れなかったので、少しはのんびり蟹の横這いを楽しみながら通過することにする。鎖にカラビナを掛けて自己ビレーした上で、クライミングダウンすると意外にも確りしたホールドやスタンスがあって下りやすかった。
源次郎尾根、八ツ峰、剱岳本峰を振り返りながら漸く剣山荘に到着したのは18時。そこで大休止の後、剱沢キャンプ場に到着したのは19時で、なんとか明るいうちに帰れた。休憩時間を含めると16時間の行動となりこの日は快晴だったためか、持参した一人3.5ℓの水も1ℓしか余らなかった。

写真9.本峰への登り、チングルマが疲れを癒してくれた
写真10.初登頂を喜び合う女性会員3人:4名が剱岳初登頂 
写真11.蟹の横這い 

 

夕食は豪華にビールで乾杯!遅く降りたのでビールが小屋で買えなかったのを交渉してくれた頼もしい会員、やさしい小屋の人…ありがとう。感謝!

3日目は4時起床、5時30分に剱沢キャンプ場を後にする。
(写真12.剱岳よ、さよなら!また会うときには、白い服着て出迎えておくれ )
この後、お盆で交通量も増えた高速道路を、ゆっくり宇部まで車を走らせた。

剱岳源次郎尾根は、高度な登山技術を必要とされる箇所はないが登山の原点である体力・技術・気力を要求される良いルートだと改めて感じた。加えて今回は雪渓が少なく、アプローチの難易度は少し上がり、ルートハンティング力も鍛えることができた良き「新人夏山合宿」だったと実感している。
反省点としては、天候が良く大事には至らなかったものの、歩行速度が遅いと山での行動時間が長くなり、それがリスクを高めることになるので、体力不足を改善していかなければならないと痛感している。日頃の山行では気づけない部分を自分たちの弱点としてはっきりと知ることができたことが収穫だったと思う。体力だけは即席では身につかないので、常日頃から自分自身の描いている目標を目指して日々のトレーニングが重要であることを自分にも言い聞かせたい。

 

出典:国土地理院発行2.5万分1地形図

text鹿野
photo江本(正)、大村(聡)、大村(孝)、田中、藤本、鹿野