HIKING RECORD 山行記録
HIKING RECORD
山行記録
槍ヶ岳 北鎌尾根湯俣ルート
日付 | 2024/08/11 |
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天候 | 晴れ |
メンバー | 有松 林 長弘 |
行程 | 【1日目…七倉山荘~北鎌尾根P4】 七倉山荘 5:00発~高瀬ダム 6:30~湯俣山荘 8:30~千天出合 10:30~北鎌尾根P4 16:00 【2日目…北鎌尾根P4~槍ヶ岳山頂】 北鎌尾根P4 5:00~北鎌沢のコル 8:00~独標 11:00~北鎌平 15:00~槍ヶ岳頂上 16:00~殺生ヒュッテ 17:30 【3日目…槍ヶ岳西稜(敗退)】 南壁取付きに行ってしまったこと、午後からの雷雨予報により敗退 |
【1日目…七倉山荘~北鎌尾根P4】
七倉山荘駐車場は満車。七倉ダム駐車場に駐車した。
七倉山荘から高瀬ダムまでのタクシーは利用せず、徒歩で移動した。
高瀬ダムに到着。ダムを見て左に進むと湯俣ルート。
ここから快適な林道と登山道を経て湯俣山荘へ。
湯俣山荘から水俣川の方へ少し歩くと吊り橋が見える。
吊り橋を渡ったところで渡渉の準備をして入渓
沢の水がものすごく冷たい。5℃以下だろうか。
ずっと浸かっていると足の筋肉が硬直するほどだった。
服が濡れることを嫌った有松と林さんは短パンで入渓したが
ロングパンツを履いた方が良かった。
今回の水量は過去の記録を見てもかなり少ない方だと思う。
極力水に浸からないように、へつりながら水俣川を遡行していた。
左岸の岩場をへつっている時、ヌメった岩で滑って林さんが小滝の中へ落ちてしまった。
反転流に引き込まれ、泳いでも岸に近づけない。20kg以上のザックも背負った状態で身動きが取れない。
林さんの「やばいっ!」の一言にハッとなり、慌てて水の中に飛び込み、林さんを岸に引き寄せた。
ここでの教訓は、バリエーションルートを歩くときはすぐにスリングを出せるようにザックから出しておく必要があること。
幸い何事もなかったが肝に銘じておきたい。
千天出合から天上沢の方に向かってしばらく歩くと水量のある大きな滝が3つほどある。
どれも右岸側から高巻く。ほどなく左岸側に残骸ワイヤーとP2へのピンクテープを見つけた。
服を着替えたり、水を汲んだりして小休止。今回は一人4~5Lずつ水を上げた(快晴無風により、結果的に水が足りなかった)
ここからP4までは藪漕ぎ、急登、そして暑さとの闘いだった。
ハイマツが刺股(さすまた)のように身体をロックしてくる。
ハイマツと4時間の格闘の末、ようやく1日目の幕営地のP4に到着。
P4からもう少し下ったところに幕営適地を見つけ、そこに4人用テントを張った。
夜中にテントの外に出たら流れ星を2つ見た。ペルセウス座流星群だろうか。
【2日目…北鎌尾根P4~槍ヶ岳山頂】
5時頃、足元が見えるようになってから出発。
天上沢側にP5の巻き道を見つけて進む。
ここで本来はP6も天上沢側を巻く道があるのだがP6稜線の取付きに上がってしまった。
ノーロープでトライしてみて直ぐに断念。ロープを出してプロテクションを取りながら進んだ。
ロープを25m程伸ばしたところの立木を終了点にした。途中、ハーケンが2ヵ所あった。
北鎌沢のコルまで、藪に次ぐ藪。北鎌沢のコルからは藪もなくなり、少々快適になる。
独標からはとにかくほとんどのピークを千丈沢側から巻いていった。
快晴無風でとても暑い。
みるみる減っていく飲み水に焦りつつも、飲む量を調整しながら進む。
P14手前くらいで巻き道が不明瞭になってきた。
このあたりから稜線に向かってガレ場を上がった。
もう少し早めに稜線に上がった方が楽だったかもしれない。
P15を超えると目前に槍の穂先が見え、山頂に人も見える。
誰が設置してくれたのか、新しめな『北鎌尾根』のプレートで記念撮影。
槍ヶ岳山頂16:30
七倉からの長い道のりに、少ない水を分け合い、励ましあいながら
一緒に登ってきた仲間たちとのグータッチ。
そして8年ぶりの槍ヶ岳山頂にたち、実に感慨深い…という余裕はなく、
早く槍ヶ岳山荘の自販機でジュースを買おうという気持ちでいっぱいだった。
【3日目…槍ヶ岳西陵(敗退)】
案の定、槍の肩のテン場はいっぱい。殺生ヒュッテからスタート。
この日の午後から天気が荒れる予報。
午前中に何とか西稜をクライミングしたいと思っていた。
前日に確認した小槍への踏み跡を進む。
明瞭な踏み跡を辿っていくとなぜか懸垂ポイントに行き当たった。
懸垂するという情報はなかったが懸垂した先に西壁側にトラバースできそうなルートもあり、そこにスリングも見える。疑心を払わずそのトラバースルートを進んだ。
結局、そこは小槍南壁への取付きだったようだ。
今から小槍西壁に取付いても途中で雨に打たれる。快適じゃないね。
「撤退しましょう」の提案に3人とも合意。槍平まで下って宴会することに決定。
「撤退したので予選敗退でーす!」と迷言を放って下山した。
【林さんコメント】
小滝に落ちた時は「荷物が濡れちゃうな」ぐらいにしか考えていませんでした。
岸に上がろうと手をかけるが、反転流に足を取られ、全く近づけない。
強力な足払いを受けている感じだ。
ザックの浮力に助けられているが、浸水したらいつまで浮力があるか分からない。
「これは時間との勝負かもしれない」「自力で下手に動かない方がいいかも」と考え、
すぐに「やばい!」と助けを呼ぶ。とりあえず腰ベルトを外して、いつでも荷物を放棄できる準備はした。
すぐに有松君が助けに来てくれて、事なきを得ることができた。
人に助けてもらえるって、こんなにも感動するんですね。
思えば、僕がヘルニアで2年間身体を満足に動かせずにフラストレーションを溜めていた時、
僕の心を癒してくれたのは宇部市のラーメン屋「優勝」だった。
命の恩人(ラーメン)だとさえ思っている。
今回は、僕の命の恩人に有松君が追加される形となった。
・落ちて、すぐに助けを呼べたのは、良かったと思う。
・スリングを準備してなかったのは、反省点だ。
・寝袋がザックの浮力体となったのは良かったが、防水サックの口を縛って無かったのは反省点だ。(空気を逃すため)
・渡渉があるときは、浮力体をきっちり作っておくほうが良いなと思った。
【長弘さんコメント】
今回、仲間と天気に恵まれ念願の湯股ルートを歩くことができました。
体力的にはきつい部分もありましたがメンタル的には3人で励まし合ったことで
そこまでの疲労感もなく充実した山行で終わることができました。
次回は西稜リベンジしましょー!
text | 有松 |
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photo | 有松、林、長弘 |